第2話 レッスン1
「お兄ちゃんの為なら私は心を鬼にします!」
そう言って新菜は頬っぺたをいっぱいに膨らませた。
やっぱりなにをやっても可愛いなと勇樹は内心にやけてしまう。
なんともかんとも天使が鬼になる?
じゃあおばあちゃんが女子高生になったら?ん?逆かなどと考えていると...
「もう!本気の本気なんだからね!!」
「ごめんごめん。別の次元に心が勝手に」
他人が見たら兄と妹がじゃれてるようにしか見えない。
現在2人は新菜の部屋で作戦会議中なのである。
「れっすんわーん!!
他人に関心を持ちましょう!お兄ちゃんは人に無関心だと聞きました。
誰にでもやさしくできる子になりましょう!
なので今回の課題は困ってる人を助けましょう!!」
「できる子って...子供じゃな...」
「なりましょう!!」
「めんどく...」
「助けましょう!!」
「おーーーう!!」
妹との仲は相変わらず良好である。
翌日学校に行く準備をしていると
「お兄ちゃん!ふぁいとだよ!」
「がんばってみるよ」
あの笑顔は反則だろ。もう泣き顔は見たくないし頑張りますか。
教室に入るとすでに何人かの生徒が席についてスマホをしたり本を読んだり、窓際でおしゃべりをしていた。
勇樹はいつもなら机に体を任せてすぐに寝てしまうのだが、今日はホームルームが始まるまで珍しく起きている。
周りはそんな勇樹を見て騒いでいるが、特殊スキル『無関心』を発動し気にもかけない。
「んっ?」
1つのグループにいる生徒に目が留まった。
授業の合間の休み時間も同じ女子生徒に注目する。
そしてお昼休みになる頃には勇樹は不敵な笑みを浮かべるが、普段はまったく他人に関心を持たない人間が笑っているので周りはなぜか怯えている気がする。
なんでみんな俺を見て怯えてるんだ?この長髪が表情を隠しているはずなんだが……
そして3日間観察を終えると、放課後に勇樹は思い切った行動に出た。
「結衣(ゆい)もカラオケ行くよね~?」
「えっ?昨日も行ったし・・・今月お金も厳しいら・・・」
「マジ?超付き合い悪くなーい?みんな行くし来るでょ?」
「じゃあ……行こ……って、えっ!?なになに!?」
勇樹が一言「ちょっと合わせたい人がいる。来てくれ」と言って、強引に手を引きながらグループから連れ去って行ったのである。
「ちょっと!いい加減にして!私になんの用があるのよ!」
「少しだけ時間をくれないか?妹に会って欲しいんだ」
「天使さまに?私が?」
「妹の信頼を取り戻す為にーーー」
その後ふたりは無言で如月家へと向かって行った。
ーーー放課後の如月家ーーー
現在、新菜の部屋では3人が沈黙していた。
「お兄ちゃんこれはどういう事か説明してもらえますか?」
「やっぱり本人の同意もなしに拉致してきたのはまずいよな?犯罪ギリギリ?断らないのが不思議不思議」
「拉致って!!!ちょっとお兄ちゃん!!!」
新菜は顔を真っ赤にして怒っている。やばい怒った顔もかわいい。
「ここ数日俺は彼女をずっと見てて気付いた事がある。」
なぜかさらに怒ってないか新菜さん?目が怖い。
「彼女は...気を使いすぎの断れない女子!きっと困っている!そして人間関係に疲れている!多分!」
「ミスターゼロって家だとこんなに普通に喋るんだ・・・初めて尽くしでいろいろびっくりしてるけど」
「それでなんで私までここにいるのかな?」
新菜が困った顔をして話す。
「俺だけじゃ不審に思われるし、新菜に彼女の話を一緒に聞いてもらいたくて。」
いやいや最初から全ての行動が不審で連れてくる途中に叫ばれなかったのが奇跡だった。
まさに断れない女子なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます