第2話

在宅勤務になり自宅や近所で近くでランチすることになるのだが、オフィス街と違って住宅街の中に美味しいお店は限られている。今日は数少ないご近所ビストロのシェフを紹介しよう。


こじんまりしたビストロにいくときは大抵家族で祝うクリスマス。桜が散り、葉桜になるこの時期に伺うのははじめてかもしれない。しかも昼。外出自粛のこの時期でも営業しているのか心配で電話すると、昼は営業しているという。しかもテイクアウトもやっているというではないか。テイクアウトについて話をききたかったのでとりいそぎ店に伺った。


お目当てはアラカルトメニューにあるフロマージュパスタ。50g単位での販売になる。コースに挟むようにして注文するものだが、単品でも注文可。これがこのお店のよいところだ。皿の上にははみだす勢いのチーズが4種類これでもかという風に盛り付けてある。ブルー、チェダー、カマンベール、エメンタールとそれぞれをワインと一緒に食べても美味しいクオリティなのだが、熱々のパスタの上で溶け出しそうになっているチーズたちを小さくくずして、パスタにからめて食べる。それはたちまち味わい深いチーズのこくが口福を引き込んでくれる。


もう一つ欠かさず注文するのはアラカルトメニューの魚介のサラダ。魚介が燻製されてサラダの上にのっかっている。ほたるいかがごろごろと、スモークサーモン、季節の貝など。今回は昼休みの間に戻らないといけなかったので、アラカルト2品だけになってしまったが、シェフはいつものように一人で店を切り盛りしながらレモンの入ったお水をサーブし丁寧に接客してくれる。


夜はマダムが接客する。マダムは少しでも料理がほめられると必ず大きな声でシェフ!美味しいそうですと厨房のシェフに声をかける。そのいさぎよい雰囲気がなんとも微笑ましいのだ。快活な奥様と色白なシェフの名コンビにこちらもつい笑顔がほころぶ。そして会計も驚くほど良心的なのだ。食べている時と会計の時の2回こちらのほほが緩む瞬間がくる。浦安にあるもの静かなシェフの店には、リピートしてしまう魔法に満ちている。

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