第33話
「おや、将兵くん。お仲間と一緒に戦わなくて大丈夫なんですか?まさかと思いますが、1人で我々と戦うおつもりなんですか?随分となめられたものですねぇ?」
瓜生に続き、戦国武将のような鎧姿の敵が
「ほう、戦えぬ仲間を庇って自ら死地に臨むか。敵ながら見事な。」
と言えば、甲冑姿の敵が
「これで皇帝陛下の命をここで果たすことが出来よう。」
と返した。その隣に立つ悪魔型の敵は気持ちの悪い笑みを浮かべながら舌なめずりをしてこちらを見ていた。時々、「エモノ。ウマソウ。」とブツブツ言いながら。
「しかし、今回のご命令は不可解ですね。このような未開の惑星の原始人に何を恐れることがあるのでしょうか。わざわざ我ら四天王全員に通達するなどと。」
不満げに死神のような姿の敵が吐き捨てるように愚痴っていた。
「確かに、戦闘力を見れば雑兵では相手にはなるまいよ。だが、それだけであろう。我らすべてが当るには過剰戦力であろうに。」
「それだけ陛下にっとっては重要なのであろう。早々に片付けて戻ろうぞ。」
「そうですね。いつまでも愚痴を言ってもしょうがありません。何やら宝をどこかへ移動させるみたいですが、武装のない原始人などさっさと殺して奪いに行きましょうかね。」
「舐められたものだな。そう簡単にやれるとは思わないことだ。さぁ、第2ラウンド開始といこうか!」
「おやおや、賢い選択では無いですねぇ。知ってますよ。ガクレンジャーシステムはエネルギー切れで使えないと。それでどうやって戦うというのですか?先程の未知の力とやらを使ったとしてもこの戦力に対抗できるとは思えませんけどねぇ。」
「確かに、今の俺はガクレンジャーにはなれない。アンタの言ってることは正しい。だが、それだけが俺の持つ力なわけではない。」
「本当に見苦しいですね。あなたは。諦めて明日香を渡してください。」
「断る!お前たちの好きにはさせない。
俺はすかさず、ジェニファー皇女殿下から下賜された『帝王の戦鎧(Emperor's competition armor)』Escaを装着。剣を抜いた。そして、鎧の換装兵装である特殊戦闘兵器(Anti Special Combat Armament)通称 ASCAを独立戦闘モードであるドラゴン形態へと変形させ自分の横に転送した。と同時に、牽制で風魔法のウインドスラッシュ(ス○Ⅱのソニッ○ブームみたいなもの)を放ち、ASCAにも搭載された兵器の掃射を命じながら、一番近い所に居た悪魔型の敵へと突っ込んでいった。
突っ込んだ勢いのまま横薙ぎで斬りつけ、一刀のもと倒れたのを横目で確認。そのまま甲冑姿の敵へと斬りつけた。数合斬り結んだ時、殺気を感じ、同時に『アーティー』からの警告、とっさに横っ飛びで移動。さっきまでの立ち位置に、倒したはずの敵が立っていた。
自分の感覚が鈍っていることに少し嘆息し、再度悪魔型の敵に攻撃。さっきと同じように一刀のもと斬り伏せた。今回は更にファイアボールによる追撃を行い焼滅させた。
何故か一切手を出さなかった甲冑姿の敵に攻撃を開始。再び数合斬りあったところでデジャヴュのように危機察知。飛び退いたところに悪魔型の敵が先程と同じ姿で立っていた。
今度は確実に倒したのを確認した。それでも現実には目の前にいる。考えられるのは再生能力が高いタイプ。残り7分。気合を入れて足止めをしないといけないが、この均衡がいつまでもつかもわからない。とりあえずもう一度焼滅させてみよう。
そう考えた俺は、悪魔型の敵に一太刀浴びせ斬り伏せ、再びファイアボールでその体を焼いた。今回はすぐさま後ろに飛びのいて、まわりに注意を払いつつ状態を観察した。
すぐに焼き尽くし、灰だけが残った。すると、その灰が自然と巻き上がり、人形にまとまった後、そこには無傷の悪魔型の敵が、何事もなかったかのように立っていた。
それはかつて異世界で見た邪神の眷属、ヴァンパイアに似ていると感じた。
『何を悩んでおるのじゃ?あれはヴァンパイアであろう。とっとと聖魔法でとどめを刺したらよかろう。』
「何を言ってるんだ?邪神の力がなければ眷属は存在できない。あの時邪神は倒した。邪神とその眷属の気配がなくなったことは2人で確認しただろ。だからあれがヴァンパイアである可能性は無い。それとも眷属は消滅せずにこちらの感知に引っかからずに生き長らえていたとでも言うのか?」
『それはないであろうな。先ほど主も言っていたが、我と主で確認して消滅したと結論づけたであろう。』
「確かにそうだが。じゃあなにか。邪神が復活したとでも言うのか?・・・ん?ってブレア。ブレアモーガンなのか!?」
『いかにも。主と共にネルティエルターナで邪神と戦ったブレアモーガンじゃ。何をそんなに驚いておる。』
「驚くに決まってるだろ。滅びゆく世界と共に眠るからってあの世界に残ったはずじゃなかったのか?また会えたことは正直うれしいんだが、どうしてここに?それもASCAの中に?」
『我も話したいところじゃが、まずは聖魔法を試してみよ。それに詳しい話はここを切り抜けた後でもよかろう。』
「それもそうだな。後でじっくり聞かせてもらおう。とりあえず聖魔法を撃ってみるよ。『ホーリーランス』。」
聖属性魔法を放つとその効果は的面だった。さっきまで原因が分からず、苦戦していたのが嘘のようにあっさりと倒すことができた。
倒せたことにホッっとしたが、新たな謎が、いや、考えたくない事実が浮かび上がってきた。邪神の眷属は、それ単体では存在できない。それが意味することは、邪神がこの世界のどこかに存在しているという証左だ。
新たな問題が発生し頭が痛くなったが、今は眼前の問題の対処を優先すべく、邪神の事は頭の片隅へと追いやった。
「ブレア、邪神の件も後で聞かせてもらうぞ。お前が理由もなく、自身で決めた決断を覆さないことは知っているからな。もちろんヴァンパイアのことといい、聖魔法のことといい知っていることを洗いざらい吐いてもらうからな!」
『そうじゃな。ここを乗り切ったら、しかと話をしようかの。』
残り10分。俺とブレアは全てを出し切る勢いで幹部たちと戦闘を開始した。
気がつけば、料太たちを強制転送させ、ブレアが駆けつけて来て300秒が経過した。
敵の増援はなくなったが、幹部クラスとの戦いは熾烈を極めた。
予定時刻まで残り300秒。使用可能兵装は90%が使用不可となっていた。
本来なら、撤退一択の状況だが、やつらの狙いが『御堂明日香』であり、そして、切り札である彼等を、『彼女』の元へと送り出す。その作戦の為、引くに引けない戦いとなっていた。
再び刀を持ち、敵のただ中へと飛び込み、回転切りで吹き飛ばし、さらに近づいてくる敵を、唐竹、袈裟切り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、左切り上げ、右切り上げ、逆風とただただ無心で斬り結んでいた。
『アラート。ミサイル接近中!着弾まで360秒。推定被害範囲、着弾点より半径30km。退避を推奨します。』
『アーティー』からの突然の警告。出来ることならその提案に全力で乗っかりたいところだが、ミサイルへの対応する時間を作るためギアを上げようとした。
しかし、ミサイルへ意識がそれた一瞬のうちに、敵幹部たちは俺たちから距離をとっていた。
「申し訳ありません。戦闘はここまでのようです。皇帝陛下より撤退命令が出ました。どうやらあなたごとミサイルで吹き飛ばすことにしたようです。別に逃げてもらっても構いませんよ。出来るものならですけどね。では、またお会いしましょう。生き抜くことが出来たらの話ですけどね。」
そういって敵幹部たちは空間の揺らぎの中に消えていった。俺は急いで会長へと通信回線を開いた。
「会長!今ここにミサイルが接近している。着弾まであと4分もない。あとどれくらいで発進できるか」」
『もうすぐ発進シーケンスが完了する。すぐに戻ってこい。回収次第発進する。』
「それは出来ない。放置すればこの付近60㎞が吹き飛ぶ。この付近のシェルターに避難している人たちを見捨てる選択なんてしたくない。。悪いが俺はこのままミサイルを破壊しに行く。俺を置いてそのまま行ってくれ。」
『何をいってるんだ、将兵。お前を置いていけるわけないだろう!ミサイルを破壊しに行くなら、俺たちも行く。待ってろ!』
「料太!一時の感情で大局を見誤るな!今は俺よりもネルティエルターナへ行く事だけを考えろ!明日を守るために今何をなすべきかを考えるんだ!それに切り札はまだある。そいつを使えばミサイル一個余裕で破壊することが出来る。それに、何も俺は死にに行くわけじゃない。ミサイルを破壊したら必ず後から合流する。必ずだ。」
俺は一方的にそう告げ、『イデ』との回線のみ残し通信を切った。すぐさま発進できるよう『イデ』へと命じた。
「『イデ』シーケンスは最低限必要なもののみ行え。残りは破棄してかまわん。完了後すぐに発進しろ。」
『了解。最上位ランクからの命令を確認。すべてのシーケンスを破棄。本機はこれより、ネルティエルターナ皇国へと発進致します。発信まで10カウント。8、7、6、5、4、3、2、1、0、発進します。』
飛び立つブレイブベースを確認した俺は、すぐに宇宙戦艦を降下させ、乗り込んだ。ジェンたちが作ったEscaの最終形態、騎士型のロボットへと変形させ、ミサイルへ向けて飛び立った。
迫りくる巨大なミサイルからこの星を守るために
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