第24話
「ぼ・僕は・・・。戦うなんてできないよ。何でだよ!みんなおかしい。この間まで事実を知って戦えないって言ってたのに!今は戦うって・・・、そんなのっ、そんなの出来るわけない!僕たちは一般人なんだよ!経験のない素人なんだ。ゲームだから戦えたけど、現実じゃ戦えないって決まってるじゃないか!負ければ死ぬってわかってるのに!どうかしてる!僕たちに何が出来るっていうんだ!!」
「君の言うことは正しいよ。誰だって命は惜しい。戦わないですむなら戦わないでいたい。俺たちだってそうだ。こんな事望んでないさ。でも、君が、いや、君たちが望むなら・・・」「そうだよ!」
「この人たちに任せればいいんだ!これまで戦ってきたんだ!これからだって戦えばいいんだ。この人たちは僕たち常人とは違う。戦うことが苦にならない人たちなんだ!騙されて流されるまま戦ってたんじゃない。自分達の意思で戦ってきたんだ!それに、9年前の装備で戦えてたんだ。なら、僕たちが無理して戦うことはないじゃないか!僕たちの代わりに戦える人たちが戦えばいいんだ!それが持つものの義務なんだから!その為にいるんだから!」
戦いから1人だけ逃げること、それが罪であると思い込んでいるようで、自身の正当性を思い付く限りぶちまけていた。
こういうときは、一度すべてを吐き出させた方が彼自身の為なので、落ち着くまで見守っていた。
「だいたいゲームのロケテのはずだったのに、いきなりこれはゲームではなく現実の世界での戦いだっていきなり言われて、はいそうですかって戦えるわけがないんだ。拒否れば多額の違約金を支払えなんて言われてどうすりゃいいんだって話だよ!一般人が戦うなんて無理なんだよ。こんなことは訓練された兵士がやるものなのに。それに、何が守る人を見てこいだよ。でも、まぁ、明日香のライブにこれたのはラッキーだったけど、結局襲撃受けてるし、みんな戦おうとするし、どうすればいいんだよ!でもこんな悩みなんて、この人たちはきっとバカにしてるに違いないんだ!そんなことで悩んでるって!俺はそんなこと小学生の頃に解決してたのに、今さらその年になって悩んでるの?ダサッ、ププゥーって、そう思って
そう言って振り返り、まどかちゃんの腕を掴んだ。
「放して!日向君!あなたは何を言ってるの?将兵おにいちゃんたちが化け物のはずがないじゃない!それに私は流されて行ってるんじゃないわ。大切な人をが戦ってる。出来ることができた。今はもう無力な私じゃない。力になりたいの!だから・・・」
「なんでそんなこと言うんだよ!一度落ちついてよく考えてよ。死ぬってわかってていく人なんていないんだよ!それでも行くって人はバカなんだよ。それにどうせ死ぬなら年寄りから死んでいけばいいんだ!天龍さんの知り合いのあの人なんかが行けばいいんだ。分かってないくせに勝手に仕切って、出来る自分をアピールしてるんだよ。僕たちはゲーマーだ。戦士なんかじゃない。さっき戦ってた人たちが戦士なんだよ!だからげーなである僕らは戦う必要はない。きっと僕らを守ることで死んだとしてもこの人たちは満足するんだ。だったら戦ってもらえばいい。戦えるんだから・・・」
「おい、黙って聞いていれば好き勝手なこと言いやがって!」
「落ち着け料太!俺らもあったろ!俺なら大丈夫、だ?」
日向君につかみかかろうとした料太を抑えていたら、彼は明日香に頬をぶたれていた。
「あなたに・・・あなたに、将兵さんの何がわかるっていうんですか!最低ですねあなたは!確かに将兵さんは10歳の頃から戦いに赴かれていました。ですが、ずっと苦しんでおられました。年端も行かない子供のころから、星一つをその小さな体に・・・。相当な重圧だったと思います。何度もくじけながら、それでも大切な人たちを失うかもしれない恐怖に耐えながら歯を食いしばって頑張ってこられたんです。あなたに分かりますか?目の前で父親が自分を庇って命を落とすのを、家族の悲しみを。そして常に向けられる非難の声。お前のせいで家族が死んだ。お前がいなければ敵が現れなかった。そんな言葉を一身に受けて、身も心もボロボロに傷つきながら戦い続けることを。私はずっとそばで見てきました。もう戦わないで、もう傷つかないでそう何度も願いながら・・・。最後の戦いから5年、ようやく幸せになれるところでまた新たな敵が現れた。立ち上がれと立ち向かえとあなたは言うのですか?抗う術を持つあなたが!私だってあなたの境遇にも思うところはあります。そのことについてはどれだけ思いのたけを叫んでもいいでしょう。ですが、これまで命を懸けて守ってこられた方々を、将兵さんを私の最愛を化け物と呼ぶことは断じて許せません。」
あんなに怒った明日香を見るのは、高校の時以来だなぁと思いながら眺めていた。気勢が削がれたのか、料太もおとなしく眺めていたが、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「愛されてるなぁ。将兵。でも明日香さん、怒ってるというよりあれ、のろけてないか?ずっとお前がいかに素敵な男性かを話してるぞ。ホント明日香さんはお前にベタぼれだなぁ。」
「本当に俺にはもったいないくらいの彼女だよ。それはそうとそろそろ止めてくるよ。彼も明日香に叩かれて、少しは冷静になってきていそうだからね。」
そう言って俺は、日向君を説教?している明日香を後ろから抱き締めた。
「ありがとう、明日香。俺のために怒ってくれて。でも、俺は大丈夫。こんなに想ってくれる
「申し訳ありません。将兵さん。わかってはいたのですが、あなたを悪し様に言われ続けたもので、耐えられませんでした。私はいつでもあなたのことを想っております。これからもずっと・・・。」
振り向きながらの上目づかいというコンボに、思わずくるりと俺の正面へと向き合わせ、ぎゅっと抱きしめながら気づけば頭をなでていた。
しばらく腕の中の明日香を堪能していたら、周りの視線の圧が強くなったのに気づいて、一旦明日香を抱きしめるのを止めた。離れるとき少し明日香が物寂しそうにはしていたが、日向くんたちも落ち着いてきたようなので、話を進めることにした。
「・・・さて、少しは落ち着いたかな?日向君。それにまどかちゃんたちも。話がそれたけど、君たちの話を聞いていくつかの疑問点が出て来た。何故敵の目的が明日香だと、特殊化学研究所の所長が知っていたのか?何故、彼はこの件に関して情報開示をしなかったのか?何故君たちと共に来ているはずの彼がここにいないのか?この件について君たちは何か聞いてないかな?それと、連絡はあった?」
「ごめんなさい。将兵おにいちゃん。私たちは何も聞かされてないわ。そういえば、ライブが始まってから所長がどこに行ったかは気にならなかった。でも確かに、連絡があってもいいはず・・・」
バシュッ、パァン。
扉の開く音と共に一発の銃声が鳴り響いた。
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