第21話

会敵している中で俺は、捕まえた後しばらくしてから殺している、ヒュドラジア帝国の行動に違和感を覚えていた。さらに戦い続けていると、殺すことが目的ではなく何かを探すことが目的ではないかという疑惑が浮上してきた。そんな疑惑が確信へと変わったのは、その後、何度目かの会敵時に、一人の少女を攫おうとしている改造兵を倒した時だった。


 彼女を保護し、ブレイブベースへと一旦戻ること伝える為、ガイザーブレスを起動させようとしたところで、ブルーから通信が入った。


『的井だ。みんな少しいいか?どうも敵の動きが何かを探しているように感じるんだが、みんなはどうだ?』


『私もそれは感じていたわ。料太はどう?』


『俺も違和感はあったぐらいだな。言われてみればって感じだ。緑川は?』


『僕も涼那達と同じだよ。』


「俺も的井の言うように何かを探しているで間違いないと思う。さっき、攫われそうになっていた少女を保護した。奴らが何を探しているかはまだわからないが、少なくとも探しているのは「地球人」と確定していいと思う。俺は保護した少女をブレイブベースへ連れて行くから、みんなは引き続き周囲の避難をっと、すまんブレイブベースから通信が入った。」


俺はガイザーブレスを操作して、全員のガイザーブレスへと通信をつないだ。

『鷲崎だ。周辺の避難は完了したと『イデ』から報告があった。今後のことと、問題が発生した。お前達の意見が聞きたい。一旦戻ってきてくれ。』


「俺も会長達の意見を聞きたいことが出来た。これよりガクレンジャーはブレイブベースへと帰還する。……みんな聞いた通りだ。一旦戻るぞ。」


『『『『了解!』』』』


俺達はブレイブベースへと転移した。



side鷲崎


俺は二人をつれてブレイブベースの指令室へ入った。少しでも事情を知りたくて、少年に話を聞こうと声をかけてはいたが、ここに来るまで一言もしゃべらなかった。


とりあえず、深川たちが来るのを待つ間、将兵たちの状況を確認すべく、彼らの映るモニターを表示させた。


イデからの情報をもとに効率よく避難指示を出しながら、ヒュドラジア帝国兵と危なげなく戦っていた。


周辺の避難率はすでに90%を超えており、もう少しで完了と言うところまで来ていた。


再度問いかけようと、少年に目を向けると、ガクレンジャーの戦う姿を悔しそうな恨めしそうな目で見ていたが、こちらの視線に気がつくと、モニターから目を反らしうつむいてしまった。


ドアの開く音がして、深川たちが入ってきたことに気づいた。


「大変だったな、二人とも。」


「ああ、それよりも、彼から事情は?」


うつむいている少年を一瞥しながら深川が聞いてきた。


「すまんな。だんまりを決め込まれててな。だが、さっき将兵たちの戦う姿をみて反応していたから、この件に関係していると思う。」


どうすれば聞き出せるか深川たちと話していると、イデから避難完了と報告が来た。全員に連絡すべく通信機を起動した。


「鷲崎だ。周辺の避難は完了したと『イデ』から報告があった。今後のことと、問題が発生した。お前達の意見が聞きたい。一旦戻ってきてくれ。」


『俺も会長達の意見を聞きたいことが出来た。これよりガクレンジャーはブレイブベースへと帰還する。』


将兵たちの方でも何かあったらしく、一度現状を整理する必要が出てきた。


避難が一段落したので、目の前の問題を解決しようと少年に問いかけた。


「君は、いや、君たちはこの件の関係者なのかい?」


最初はうつむいていた少年だったが、問いただそうと言葉を投げかけていくと、警戒が強くなったのか次第に、気を失っている仲間を庇う様にこちらを睨みつけてきた。


そうこうしているうちに、増上寺が明日香さん含めライブ関係者、将兵の関係者をつれて司令部に入ってきた。


「お兄ちゃんは!無事なんですか?」


入ってくるなりみずほちゃんが、つかみかかるような勢いで詰め寄ってきた。


「将兵なら大丈夫だ。もうすぐ戻ってくるよ。それよりも、みずほちゃんは知ってたんだな。将兵のこと。」


「こないだ聞きました。お兄ちゃんのこれまで。信じられなかったです。それに会長さんたちがブレイブスワットだったなんて。」


みずほちゃんとそんなやり取りをしていると、


「申し訳ございません。少しお話ししてもよろしいですか?状況の整理をしたいので・・・。」


そう言いながら近づいてきたのは、明日香さんだった。


「みずほちゃん。ちょっと俺の後ろに。」


俺は彼女からみずほちゃんを守るように前に出た。里浦たちも明日香さんを囲むように集まってきた。


「感謝を込めてなんて招待状を送ってきて。今回のこの騒動。何を知っている?あんたいったい何者なんだ?返答次第では容赦はしない。」


厳しい目を向けて明日香さんを睨みつけていると、みずほちゃんが俺の横をすり抜けて、彼女に抱き着いていた。


「みずほちゃん。危ないから離れて!」


「大丈夫ですよ。明日香姉さんは怪しくないですよ。」


みずほちゃんは振り向いて言ってきた。というか、今、姉さんって言ってなかったか?


「みずほちゃん?明日香さんを姉さんってどういうこと?怪しくないって?」


「明日香さん。お兄ちゃんの婚約者です。」


呆気に取られている俺らの前で、明日香さんはきれいなお辞儀をしていた。


「初めまして、将兵さんの婚約者の明日香です。状況が状況なので詳しい話は後程。現状までは把握しております。」


「じゃあ、なぜ、俺達にチケットを?」


「本当の将兵さんを知っておられる方々に、直接お知らせしたかったのです。私たちのことを。でも、このようなことになったために、余計な誤解を招いてしまいました。申し訳ございません。ですが今は、そのことよりも状況に把握を進めていくことが先決だと思いますので。彼らなのでしょう?可能性があるのは。」


明日香さんが将兵の婚約者という事実に衝撃を受けたが、明日香さんの言うように今すべきことを優先すべく、(もちろん後で将兵に詳しい話を聞くとして)ただじっとこちらの様子をうかがっている少年に目を向けた。


「会長、問題というのは?」


ドアの開く音と共に将兵たちが戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る