第18話

非常灯が灯り、突然の停電、断続的な振動。過去の出来事に通じる何かを感じ取ったのか、観客達は不安をあらわにざわつき出した。


ブレイブスワットに支給されている小型のサポート端末から、ブレイブベース管理A.I『イデ』へと現状確認を求めた。


「世界各地に現地生命体以外の存在を確認。データベースより、該当生命体は帝聖ヒュドラジア帝国軍改造兵と判断。」


報告を聞いていると、俺の隣に並んで座っていた伊東と葵が俺に話しかけていた。


「ショウ、いったい何が起こってるんだろうな。ステージもなんか慌ただしく話し合ってるし。」


「ねぇ。なにか嫌な予感がするんだけど。……それに、将兵の知り合い全員がなにか慌ただしくしてるのは何故?」


『国家間の争いにより、宇宙警察は宇宙警察憲章に則り、ブレイブスワット各隊員の戦闘介入は、禁止とします。以降、プロテクター及び、サポートビビークルへのアクセスを停止致します。』


「さぁ?たぶん、何かあったかネットで調べてるんじゃないかな。それに緊急事態なら明日香からお知らせがあるんじゃないかな。」


俺は、伊東達に答えつつ、『イデ』からの報告を聞いていた。


葵に言われて会長の方に目を向けると、会長を中心にサークルメンバーは集まっていた。


『イデ』警告を受けたが、確認のため、会長達はプロテクターを転送しようと試みたようだが、なにも変化することはなかった。


「嘘だろ?この状況で戦えないなんて。目の前の命を救えないなんて!」


「落ち着け!深川。例え戦えなくとも、俺達に出来ることがあるはずだ。そうだろ、鷲崎。」


「会長!ここは安全ですが、このドームの周りには会場に入れなかった明日香のファンを含め、かなりの人員がいます。このこのシェルターでは全員の収容が出来ません。」


「竜胆の言う通りだ。俺達は俺達の出来ることをしよう。里浦、増上寺、深川、竜胆、ブレイブベースをシェルターとして開放する!これより我々は、観客の避難誘導を行う。行くぞみんな!」


「会長、鈴城は?」


「あいつには、ブレイブベースのことを明日香さんに連絡してもらう。俺達の会話を聞いてるようだし、大丈夫だろう。」


会長達の会話を聞きながら、早瀬指令達に目を向けると、長官と雄二と合流しており、料太達は慌ただしく会場を出て行くところだった。


不安そうにこっちを見ていたお袋とみずほにも声をかけた。


「いいか、ここにいれば大丈夫だ。このあと指示が流れるだろうから、それにしたがって欲しい。」


「お兄ちゃんはどうするの?……イヤだよ、ここにいてよ。いっちゃ…やだぁ。」


「将兵。大丈夫なのよね。皆さん慌ただしく動いてるみたいだけど。」


袖をつかんで泣きそうな顔のみずほの頭を撫でながら、お袋の目をみて安心させるように優しく話した。


「ちょっと明日香と話したら、付近の避難誘導を手伝ってくるだけだ。大丈夫。危ないことはしないから。」


「ショウ!今明日香と話すって言ったか?」


「ああ、ってそんな目で見るな。葵も。詳しい話は落ち着いたら話す。じゃあ、後でな。」


何か言いたそうな3人をおいて、早瀬指令達の元に向かった。


「長官、スタークスアイゼンは起動できますか?」


開口一番長官に尋ねた。


「すまん。将兵くん。やはり、起動コードを受け付けてはくれないようだ。だが、外部も含め多くの人をここに受け入れることは難しい。将兵君、付近のシェルターへの護衛頼めるか?」


「いえ、長官。この地下にはブレイブベースがあります。そこなら10万人は収容できるので、会長、鷲崎会長達には話しておきます。長官達は彼らと避難誘導をしてください。」


俺はそう言うと、ステージに飛びあがり、明日香の元へと走り出した。


ステージ上では、明日香を中心にスタッフが集まり話をしているようだった。


明日香が俺の方を向いたので、周りのスタッフも俺に目を向けた。


近付こうとする俺を不審者と判断したんだろう。男性スタッフが近付けまいと取り押さえに来た。


彼らを説得する時間が惜しいので、申し訳なく思いながら、スルリとかわして明日香の前に立った。


再度、捕まえようとするスタッフの目の前で、明日香がギュッと抱きついてきた。


一瞬で周りの空気が固まったが、明日香を抱き締めながら、状況を説明した。


「ブレイブベースをシェルターとして開放するから、観客に案内をお願い。俺は、料太達に続いて付近の安全を確保してくる。じゃあ、行ってくるよ。明日香。」


明日香に軽く口づけし、俺は外へと向かい走り出した。

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