第15話

「ふぁ~あ。」

昨日の夜、料太の店でネルティエルターナでの戦いを話終えたは1時を回っていた。


お開きにしようとしたら、生殺しはイヤ、続きが気になるということだったので、遅くならないように駆け足で説明した。


結局、3時までかかったが、遅くまで場所を提供してくれた料太に感謝し、予定を会わせて同窓会をしようと約束し別れた。


明日香をホテルに送り届け、仮眠をとって今は仕事に行くため、家を出たところで大きなあくびが出た。


「おはようございます。朝なのにお疲れですねぇ、将兵お兄ちゃん。」


「ん。ああ、おはよう。少し寝不足でね。朝から元気だね。まどかちゃん。」


振り向いた先、艶やかな黒髪に朝日を浴びてキラキラと輝かせ、クスクスと微笑んで佇む制服を着た美少女に挨拶を返した。


彼女の名は天龍てんりゅう まどか10年前、迷子になっていたを彼女を保護し、一緒にお母さんを探してあげたら、妙になつかれてた。その後、家が近所だったこともあり、小学生の頃まではよく一緒に遊んであげていた。中学にあがってからは、時間がずれたためあまり会えなくなっていたが、まぁ、今みたいに会えば挨拶はしていた。


「珍しいね。こんな時間に通学なんて。時間は大丈夫なの?」


「ええ、朝練が休みだから、いつもより遅いけど大丈夫ですよ。久しぶりだし、将兵お兄ちゃん。駅まで一緒にいこ?」


「いやいや、こんなおじさんと行くより彼氏と行った方がいいんじゃない?」


「彼氏なんかいません!何でそう思ったの?」


「しばらく見ないうちに、こんなにも可愛くなってたから、彼氏でもいると思って。じゃあ、モテるんじゃない?それだけ可愛いと。」


「告白はされるけど、全部断ってるから。好きな人はいるから。」


「好きな人から誤解されたくないだろ。その子と一緒にいけばいいんじゃない?大丈夫。まどかちゃんなら断られることはないよ。」


「ほんとにそう思ってます?でも、その人は私のこと妹みたいに思ってて、恋愛対象じゃないみたいなんですよねぇ。前みたいに会えなくなったけど、会えたときはアタックしてるんです。だけど、全然気づいてもらえなくて。どうしたら気づいてもらえると思う?将兵お兄ちゃん?」


「まどかちゃんも、ほんとに大きくなったね。恋の悩みお相談されるなんて、思っても見なかったよ。おじさん、恋愛経験乏しいけど、頑張ってみようかな。……そうだね、妹じゃなく、1人の女性として意識させることから始めたらいいんじゃないかな。例えば、腕を組んで胸を押し当てたり、デートに誘ったりとか?後は、何か言われたらあなただけだよとか言ったりね。」


「わかった。恥ずかしいけど頑張ってみるね。デートの相談もしたいから、一緒にいこ!」


「わかったよ。相談がてら途中までエスコートしましょうかね。お嬢様。」


「いこ!将兵お兄ちゃん♪♪」


ニコッと可愛らしい笑顔と共に、右腕を抱き抱えられた。


「ちょっと待とうか、まどかちゃん。好きな人とって言ったでしょ。こんなおじさんと腕を組んで、あらぬ誤解を受けちゃうよ。事案になっちゃうからやめようか。」


「むぅ。大丈夫だよ、将兵お兄ちゃん。それとも、私とじゃ……イヤ?」


今にも泣きそうな顔で見つめられて、思わず認めてしまった。


「はぁ。わかったよ。で、どうやってデートに誘うんだ?たぶん相手はデートって気づかないぞ。」


諦めて腕を組んだまま歩き出した。回りの視線に耐えながら。


「デ、デートなんだけど、駅前で待ち合わせして、映画見て、ウィンドウショッピングして、ご飯食べようと思うんだけど、どうかな?」


「その前にちょっといい?どうやって誘うの?」


「あっ、」って顔をして、気持ちが先走っていたことを恥じるように、小さく「なにも考えてなかった。」とポツリとつぶやいた。


「まぁ、普通に遊びに行こうって誘えばいいんじゃない。それだけ身近なら断らないと思うよ。それと、待ち合わせは少し早めにね。後は服を選んでもらうのもいいかもね。その人の好みもわかるって利点があるから。まぁ、当たり前だけど腕を組んで歩くのはデートならデフォだからね。こんなところかな?じゃあ、頑張ってね。」


話していると駅についたので、エールを送って別れようとしたら、腕を引っ張られた。


「将兵お兄ちゃんって御堂明日香のファンだったよね?」


「まぁ、ファンっていえばファンだな。いきなりどうした?」


「あの、あのね。将兵お兄ちゃん、今度の土曜日って空いてる?明日香のライブのチケットがあるから一緒にどうかなぁと思って。」


「ライブのチケット、まどかちゃんも買えたんだ。」


「将兵おにいちゃん、今”も”って言った?”も”って。」


「うん。言ったよ。俺もそのライブのチケット持ってるんだ。せっかく誘ってくれたのにごめんね。でもね。まどかちゃん。これはチャンスだよ。そのチケットつかって好きな人を誘ってみたらいいんじゃない。」


そういってまどかちゃんを見たら、一瞬だけ少しむくれたような表情をしていた。


「じゃあ、友達でも誘っていくね。でも、代わりに今度洋服を買いに行こうと思うから、つきあってほしいなぁ、なんて。だめ?」


「わかったよ。乗り掛かった船だし。付き合うよ。じゃあ、日にちを決めたら教えて。」


そう言ってその日は別れ、いつも通りの日常を過ごし、何事もなくライブ当日になった。


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