第15話
「ふぁ~あ。」
昨日の夜、料太の店でネルティエルターナでの戦いを話終えたは1時を回っていた。
お開きにしようとしたら、生殺しはイヤ、続きが気になるということだったので、遅くならないように駆け足で説明した。
結局、3時までかかったが、遅くまで場所を提供してくれた料太に感謝し、予定を会わせて同窓会をしようと約束し別れた。
明日香をホテルに送り届け、仮眠をとって今は仕事に行くため、家を出たところで大きなあくびが出た。
「おはようございます。朝なのにお疲れですねぇ、将兵お兄ちゃん。」
「ん。ああ、おはよう。少し寝不足でね。朝から元気だね。まどかちゃん。」
振り向いた先、艶やかな黒髪に朝日を浴びてキラキラと輝かせ、クスクスと微笑んで佇む制服を着た美少女に挨拶を返した。
彼女の名は
「珍しいね。こんな時間に通学なんて。時間は大丈夫なの?」
「ええ、朝練が休みだから、いつもより遅いけど大丈夫ですよ。久しぶりだし、将兵お兄ちゃん。駅まで一緒にいこ?」
「いやいや、こんなおじさんと行くより彼氏と行った方がいいんじゃない?」
「彼氏なんかいません!何でそう思ったの?」
「しばらく見ないうちに、こんなにも可愛くなってたから、彼氏でもいると思って。じゃあ、モテるんじゃない?それだけ可愛いと。」
「告白はされるけど、全部断ってるから。好きな人はいるから。」
「好きな人から誤解されたくないだろ。その子と一緒にいけばいいんじゃない?大丈夫。まどかちゃんなら断られることはないよ。」
「ほんとにそう思ってます?でも、その人は私のこと妹みたいに思ってて、恋愛対象じゃないみたいなんですよねぇ。前みたいに会えなくなったけど、会えたときはアタックしてるんです。だけど、全然気づいてもらえなくて。どうしたら気づいてもらえると思う?将兵お兄ちゃん?」
「まどかちゃんも、ほんとに大きくなったね。恋の悩みお相談されるなんて、思っても見なかったよ。おじさん、恋愛経験乏しいけど、頑張ってみようかな。……そうだね、妹じゃなく、1人の女性として意識させることから始めたらいいんじゃないかな。例えば、腕を組んで胸を押し当てたり、デートに誘ったりとか?後は、何か言われたらあなただけだよとか言ったりね。」
「わかった。恥ずかしいけど頑張ってみるね。デートの相談もしたいから、一緒にいこ!」
「わかったよ。相談がてら途中までエスコートしましょうかね。お嬢様。」
「いこ!将兵お兄ちゃん♪♪」
ニコッと可愛らしい笑顔と共に、右腕を抱き抱えられた。
「ちょっと待とうか、まどかちゃん。好きな人とって言ったでしょ。こんなおじさんと腕を組んで、あらぬ誤解を受けちゃうよ。事案になっちゃうからやめようか。」
「むぅ。大丈夫だよ、将兵お兄ちゃん。それとも、私とじゃ……イヤ?」
今にも泣きそうな顔で見つめられて、思わず認めてしまった。
「はぁ。わかったよ。で、どうやってデートに誘うんだ?たぶん相手はデートって気づかないぞ。」
諦めて腕を組んだまま歩き出した。回りの視線に耐えながら。
「デ、デートなんだけど、駅前で待ち合わせして、映画見て、ウィンドウショッピングして、ご飯食べようと思うんだけど、どうかな?」
「その前にちょっといい?どうやって誘うの?」
「あっ、」って顔をして、気持ちが先走っていたことを恥じるように、小さく「なにも考えてなかった。」とポツリとつぶやいた。
「まぁ、普通に遊びに行こうって誘えばいいんじゃない。それだけ身近なら断らないと思うよ。それと、待ち合わせは少し早めにね。後は服を選んでもらうのもいいかもね。その人の好みもわかるって利点があるから。まぁ、当たり前だけど腕を組んで歩くのはデートならデフォだからね。こんなところかな?じゃあ、頑張ってね。」
話していると駅についたので、エールを送って別れようとしたら、腕を引っ張られた。
「将兵お兄ちゃんって御堂明日香のファンだったよね?」
「まぁ、ファンっていえばファンだな。いきなりどうした?」
「あの、あのね。将兵お兄ちゃん、今度の土曜日って空いてる?明日香のライブのチケットがあるから一緒にどうかなぁと思って。」
「ライブのチケット、まどかちゃんも買えたんだ。」
「将兵おにいちゃん、今”も”って言った?”も”って。」
「うん。言ったよ。俺もそのライブのチケット持ってるんだ。せっかく誘ってくれたのにごめんね。でもね。まどかちゃん。これはチャンスだよ。そのチケットつかって好きな人を誘ってみたらいいんじゃない。」
そういってまどかちゃんを見たら、一瞬だけ少しむくれたような表情をしていた。
「じゃあ、友達でも誘っていくね。でも、代わりに今度洋服を買いに行こうと思うから、つきあってほしいなぁ、なんて。だめ?」
「わかったよ。乗り掛かった船だし。付き合うよ。じゃあ、日にちを決めたら教えて。」
そう言ってその日は別れ、いつも通りの日常を過ごし、何事もなくライブ当日になった。
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