第10話

side葵


私、深月 葵と鈴城 将兵との出会いは、大学2回生の秋だった。


その日、遊んでる途中で、友人のトイレ待ちをしていたら、ナンパにあってしまった。私は、ミスコンで優勝したこともある整った容姿であった為、ナンパにはよくあっていた。しかし、今回のナンパはたちが悪く、何度断っても付きまとわれ、つい手が出てしまい、腕を捕まれ、近くに待機していた車へと連れ込まれようとしていた。回りの人たちは、関り合いたくないのか、目を背けて足早に去っていった。諦めかけたその時、バシッって言う音と共に、誰かに手を引かれてその場から連れ去られていた。しばらく走って、追っ手がないことを確認し、そこでようやくハッキリと相手を確認できた。それが将兵だった。


その後、将兵に連れられ、近くの交番へ行き、被害届を提出しそこで我に返り、お礼を言おうと振り返ったら、そこには誰もいなかった。調書が終わったらすぐに帰ったとお巡りさんが教えてくれた。


後から思うと、このときすでに落ちていたんだと思う。


だから、必死に探し回ってようやく大学で見つけ出すことが出来た。


その後は、友人となり、恋人ととなれるようアプローチを開始したけど、鈍感すぎて気づいてもらえなかった。


長期戦を覚悟して、気づけば5年たっていた。


このまま続くと思っていた、いつか気づいてくれると思っていた。そこからの一歩も踏み出せずにいた私に、最悪の報せが届けられた。


お風呂から上がり、部屋でキンキンに冷えたビール片手に、最近お気に入りの猫の動画を見ていたら、ループの着信音がなった。


画面を確認するとみずほちゃんからだった。


みずほちゃんからの電話を受けて、気づいたら、将兵が目の前にたっていた。


とっさにみずほちゃんに用事があることにして、部屋に行き自分の情けなさにうちひしがれていた。


そんな私をみずほちゃんは、励ましてくれていたけど、ノック音がしてドアの前には、将兵と歌姫が仲睦まじく立っていた。


みずほちゃんとのやり取りを聞いていたら、後悔がどんどん押し寄せてきて、すべての音が聞こえなくなっていた。


将兵が何か言ってきているのが見えたけど、首を振るしかできなかった。


そんな私の手を引っ張って、歌姫は将兵の部屋へと連れていかれた。


side明日香


私は、将兵さんの友人と紹介された深月さんの様子がおかしい原因に思い当たり、無礼なのはわかっていましたけれど、無理矢理手を引いて、将兵さんに確認を取り、彼のお部屋へと連れ込みました。


「どうして連れてこられたか、わからないってお顔をされてますね。」


深月さんの目を見て、お話ししようとしましたが、お顔を反らされてしまいました。


「お逃げにならないでください。私の話をお聞きください。あなたは私と同じだと思いましたので。」


深月さんは、キッと睨み付けて仰りました。


「私と歌姫であるあなたが同じな分けないじゃない。」


「いえ、同じですよ。あなたも将兵さんに一目惚れされたのでしょう?助けていただいた時に。そして、今まで想い続けてこられたのでしょう?」


「だから何?今さらそんなこと言ってもどうしようもないじゃない。」


「そうでしょうか?少なくとも、あなたの心はそう思っておられないようですが。」


「私は将兵さんにプロポーズされました。でも、私の他にもう一人将兵さんを想っている女性がいます。その方にもプロポーズしていただくことをお願いしようと思っております。」


「そんなことできるわけないじゃない。」


「できますわ。法律的になら何も問題はありません。今は明かせませんが、クリアできる手法があるとだけ、お教え致します。心理的にも問題ありません。とてもよいい表現法方が見つからないのですが、初めてお会いした時に、将兵さんを共に支えていく御方だと心から思えたと、あの方と二人、共感しているからです。あなたを見たとき、私達と共に将兵さんを支え合っていくビジョンが見えた気がしました。」


深月さんがお疑いになられている目をお向けになられました。


「私は、ただお伝え申し上げただけです。どう為さるかは、あなた次第です。じっくりとお考えください。」


私はそうお伝えして、再び深月さんの手を引いて、将兵さんのお部屋を出ました。









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