七年前 十八歳
「決めたわ!あなた、私の騎士になりなさい!」
「断る!」
どうしてこうなったか?この状況に陥った原因は三十分前に遡る。
大学合格後、羽を伸ばそうと近くの山の展望台へと向かっている途中で、道を外れた茂みの奥から響く女性の叫び声を聞いた。
無意識に俺は叫び声の方に向かうと、二人の少女を武装した10人もの兵士が取り囲み、今にも引き金を引こうとしていた。
俺は瞬時に気配を殺し、司令官に攻撃を仕掛け、一撃で意識を刈り取った。混乱の中すべての兵士の意識を刈り取り、急いで二人の手を取りその場から離れた。
「ちょっと、聞いてますの?この私、ネルティエルターナ皇国第三皇女ジェニファー・フランシス・ネルティエルターナ自ら騎士にして差し上げると言っているのです。私の言葉はすなわち勅命。拒否権はありません。この無礼者め!」
俺がかかわったことを若干後悔しているうちに、自称皇女様はヒートアップしていた。
このままじゃ埒が明かないと踏んだもう一人の少女クリストファー・シノディア・カストゥールから、自称皇女を宥めつつ、自分たちがの異星人であり、こことは違う銀河系で二千年続く皇国の人間で皇女と護衛だと紹介された。また、皇帝の政策に不満を持つ宰相を中心とした、一部の貴族と軍部がクーデターを起こし、入念に計画されていた為か皇族側は為すすべなく捕らえられ、かろうじて彼女達が逃げ出す事が出来た。何とかこの銀河まで逃げ延びたが、追っ手に見つかり襲われていたところを助けられたと説明された。
話を聞いた俺は、溜息をつきつつ、この星に火の粉がかからないために協力することにした。
戦い始めて数か月後、ネルティエルターナに古くから伝わる『赤き龍騎士伝説』に登場する赤騎士の鎧のレプリカを渡された。
光学迷彩、索敵、バリア、バーニア等伝説に登場した逸話を、科学的に再現した装備が施されており、様々な状況下でも行動可能な代物だった。
いつまでも続く膠着状況にしびれを切らした宰相が、試作段階だった時空震動爆弾を反クーデター軍の本拠地である惑星に向けて落とそうとしていた。
その計画に気づいた俺は、阻止するため単身研究所に忍び込んだ。途中家族を人質に脅迫されていた科学者である第4皇女を家族ごと救出し、皇女と共に爆弾破壊に向かった。しかし、爆弾はすでに発射シーケンスに入っており、爆弾を破壊するため、急いで乗ってきた小型宇宙船に皇女と共に乗り込んだ。開発者である彼女の助言に従い、宇宙船と鎧のバリア、持てる全ての武装を爆弾を破壊したが、予想以上のエネルギーにより、俺たちは成す統べなく光の奔流に飲み込まれた。
決戦はネルティエルターナ本星衛星軌道上で行われていた。俺は、赤き鎧を装着し反クーデター軍の総司令として前線で指揮を執っていた。宰相は巨大なパワードスーツに乗り込み、本星を破壊する為完成した時空震動爆弾を放とうとしたが、こちらも皇女達の協力を得て反時空震動爆弾を完成させ、相殺することに成功した。切り札を失った宰相は、作戦の失敗を悟り、本星へと自爆特攻を仕掛けようとしたので、パワードスーツのコックピットに乗り込み宰相を捕らえた。
ネルティエルターナ全土を襲った内乱が終結し、歓喜に震える日々のなかの式典当日、内乱終結の立役者である赤騎士は姿を見せることはなかった。
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