第23話 父の日
「蒸す季節になってきたわね」
「雨も多くなってきたし、そろそろ梅雨入りしそうね」
今日も昼休みは
「桜子は父の日はどうするの?」
「うーん、まだ考えていなくて…
「私もまだ。母の日が終わったばかりなのにね」
「私は母の日にはカーネーションとパステルラムネを贈ったんだけどラムネはウケなかったわ。母はB級グルメや駄菓子に理解がないから…美味しいのに」
「SNSで人気に火が付いた生駒市の有名なラムネよね、手に入れるのに苦労したんじゃない?」
「母よりもお祖母様が喜んで召し上がったそうよ」
「ああ、
パステルラムネは入手困難な幻のラムネ菓子だ。インターネット販売を行っていないため桜子もこれまで入手できなかったが、大和領に引っ越して店頭で購入できるようになったのだ。パステルカラーでコロコロした形がSNSで映えると評判だ。
桜子はコバたんと一緒に早起きして店頭に並び、しっかりと自分の分も確保した。
白いラムネはコバたん、パステルカラーのラムネは桜子。一人と一羽で仲良く分け合った。
「ねえ
「俺は別に。母の日も何もしていねえしな。三郎は幼稚園で手紙でも書くんじゃねえか」
「うちも特に何もしないな」
「私は無難に三輪そうめんでも送っておくわ。どうせ私とは味覚が合わないし…。それよりも6月16日の和菓子の日にいただくお菓子が問題だわ。何を取り寄せようかしら」
「うちはどうしようかな、お姉ちゃんと相談しなきゃ」
面倒なことはさっさと手配してしまえとばかりに、サッと決めて通販でパッと手配を終えた桜子だった。
三輪そうめんは桜井市を中心とした三輪地方で生産される三輪地方の特産品だ。三輪地方は素麺発祥の地とも言われている。
確かに美味しいし良いものだが、早起きして行列した母の日と違い過ぎる。贈り物選びの背景を栄一が知ったら泣くだろう。
その週の土曜日はヒロの家で梅子のブラッシングを手伝った。換毛期で梅子の冬毛が大量に抜けた。父の日のことなど、すっかり忘れてまるでヒロと家族のようだと浮かれながら梅子の世話をする桜子だった。
6月の第3日曜日、完全に父の日のことを忘れて大和の別邸でくつろいでいると栄一から電話がかかってきた。
「桜子ちゃん! 父の日のプレゼントをありがとう!」
サッと決めてパッと手配して、すぐに忘れた桜子との温度差が激しい。
「桜子ちゃん、別邸で困っていることはないかい? 欲しいものはある? お父さんも月に一度は別邸に行こうかな…。終業式が終わったらすぐに帰ってくるよね? お父さん、桜子ちゃんが帰ってくるのを楽しみにしているんだよ。帰ってきたら一緒にカキ氷を食べに行こうね、お母さんも一緒だよ。それから…」
父の日よりも和菓子の日の方が気になっていたし手配した後はすっかり忘れていたとは、とても言えないな…と思う桜子だった。
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