第7話 半年ぶりのヒロと桜子

 心の準備が整わないまま桜子とバッチリ目があった。


「とっととととっ隣の席だなんて偶然ね」

「あ、あああああっ …1年間よろしく」


めちゃくちゃ不自然な2人だった。


── 1学年に1クラスだから同じ教室で過ごすことになるのは分かっていたけど隣の席だなんてラッキー!学園生の間はこの席順よね。… 小さな頃は仲良しだったのに、いつの間にか意地悪な態度ばっかりになって…。また優しいヒロに戻るなら許してあげるけどね!


── やばい…また可愛くなってるじゃないか。なんか、ちょっといい匂いするし。…ついついアレな態度をとってしまう癖を改めるチャンスだな。まあ自然に振舞えば問題ないだろう。もともとお互いの親が心配するほど気が合っていたからな!


 心の声を押さえつつ、チラチラとお互いを盗み見る桜子とヒロ。



「テックンも一緒なのね、嬉しいわ。よろしくね」


先手を打ったのは桜子だった。


 ビジネスマンの必須スキル“アイスブレイク”だ。商談の場において顧客との距離を縮めるのにとても重要なテクニックである。不器用な思春期のヒロに直接話しかけるのではなく精霊のテックンに話しかけるのもポイントが高い。


「ガッチャ!」

「嬉しいお返事をありがとうテックン、またコバたんとも仲良くしてくれると嬉しいわ」


「クポッ!」

「ガッチャ!」

 テックンは、ひねた思春期のヒロと違って素直な良い子の精霊だ。コバたんとも顔見知りだし上手くやっていけるだろう。


ヒロがちらりとコバたんを見る。

「相変わらず丸まるとして精霊らしくない奴だな」


 ついついアレな態度をとってしまう癖は自然に治るものではなかった…。

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