僕と龍の物語

プロローグ

他人の持つものは羨ましく思うのは人間の性だろう。

僕は羨んだ。妬んだ。その数は星の数ほど多いだろう。


強欲。その言葉で片付けられるほど、僕は他人の”才能”を羨んだ。

強欲。その言葉で片付けられるほど、僕は才能がなかった。


それでも自分は無能だと肯定したくなかった。認めたくなかった。

小説を読み、主人公に、その在り方に憧れを抱き自分にも何か有るんじゃないかと、才能や力や解決能力やカリスマ性や…そんなたいそうな物じゃなくてもいい。

高望みはしない。しないから、だから僕にも何か欲しくって、理想を抱き思い焦がれた。


そんな僕にも天からの恵みがやってきた。


一つの卵を手に入れたのだ。


日常から非日常へ。

理想へ近づけるのではないか。 ―――思った。

僕もきっと他人と違うのだ、何かやっぱりあったのだ。 ―――思った。

きっとこれから何かが変わる、憧れに近づける。  ―――思った。



卵を拾い、憧れに一歩近づいた気がした。



近づいた気がした。気がしただけだった。



拾った日から一年の月日が経過した。




僕は何も変わらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と龍の物語 @ao1230

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る