第13話 嘘と記憶
僕は嘘をついて隠し通すことにした。
「何でもないよ」
「何でもないわけ……」
そしてルイは自分の左手の爪が血で濡れていることに気づいた。
「え?」
ルイは気づいた。
「わ、私がセイくんを……襲ったの? 襲ったのね? そうなんでしょ……? 私のために嘘をついてくれたんでしょ……?」
これ以上、嘘をついて隠し通すのも良くないと思った僕はルイに本当のことを言うことにした。
「うん、そうだよ。僕はルイに襲われた。ルイは牙をむいていたから、きっと僕を食べようとしていたんだと思う。」
「ひっっ!!」
ルイは手で口を押さえながら驚いている。
「けれど、満月のせいなんだよ」
「満月……?」
「うん、そう。さっき、強風でカーテンが開いた時、ルイは満月を見て、僕を襲ったんだよ。映画とかでよくある満月が現れたらオオカミ男になるみたいに。そして、僕がこのカーテンを閉めるまでルイは僕を襲い続けた。つまり、ルイは満月の光が当たるのもダメってことになる。それに、ルイは僕は襲ったことを覚えていない。満月を見たり、満月の光に当たったら暴走する上に記憶が無くなるみたいだね。僕がもし今、つかんでいるこのカーテンを開けたらきっと同じことが起こると思うよ」
そして僕は月の光が再び当たらないようにカーテンの裾を引っ張りながら手探りで窓を閉めた。セイの説明を聞いてから、ルイはまた自分の知らないうちにセイを襲って傷つけてしまうかもしれないことへの不安と、さっきセイを襲って傷つけてしまったことに対する罪悪感に襲われた。
「ごめんなさい!! ごめんなさい!! 本当にごめんなさい!! 傷つけて」
「こんなの大したことないよ。もう血も止まってきたし」
僕はシャツのボタンを外して血がにじんだところをめくりながら言った。
「もう二度と傷つけたくないの! だから、私のことはもう忘れて! ほっといてくれていいから!」
そう言ってまた泣き出したルイをなだめるように、僕はルイを抱き寄せた。
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