第10話 確認は大事ですね
今回の工程はこうです。
まずは膝と肘を切断し、一度クーラーボックスにしまいます。そのあと完全に四肢を切り分け、これもクーラーボックスにしまったら、内臓に移ります。
内臓については、最初は消化器官と他のもので処理を分けるつもりでしたが、素人がうまく切り分けられるか分かりません。でも、せめて胃と腸だけは分けないと後が大変でしょう。このころには彼も死んでいるはずですし、多少時間をかけてでもそれらは分けるつもりです。
胃と腸は中身をビニール袋をかぶせたバケツに移し、少しずつトイレに流すつもりです。彼がこのようになっていることから考えて、夕食を食べていないことを願いましょう。食べていなければ胃に大きめの内容物はないはずです。もし入っていれば、トイレが詰まらないようにバケツから取り除かなければなりません。考えるのも嫌なことです。
処理の終わった内臓たちは全てビニール袋に小分けにして冷凍するつもりです。
最後に残った頭部と胴体はクーラーボックスの中身を冷蔵庫に、内臓を冷凍庫にしまった後になります。これらについては内臓と同じように食べるつもりはありませんから後片付けが楽になるように処理するつもりです。後頭部から――
――大事なことを思い出しました。
解体の前に彼の体毛の処理をしなければなりません。これはどうしても彼の顔を見る羽目になりますし、生きているうちにやりたいです。
剃刀をもってこないといけません。なぜ大事なことを忘れていたのだか……段取りを確認していたのが功を奏しました。
洗面所からT字剃刀を持ってきました。シェービングジェルはいらないでしょう。ふき取るのが面倒になるだけです。
肉を取るつもりなのは脚と腕だけなのですが、処理について考えるなら、全て剃ってしまうべきでしょう。
ただの体毛ですし、ごみ捨てにはそこまで気を回さなくても済みそうです。大量に一度に出すとさすがに目立ちそうですが、彼の頭髪は短めですし、ビニール袋にひとまとめにしてゴミ袋に中央に入れておけば問題ないと思います。
まずは脚から始めましょう。彼自身も多少処理はしているようですのでそれほど時間はかからなさそうです。
剃り残しがないように丁寧に、かつ急ぎつつ上へ上へ進んでいきます。自分の処理なら毛の流れに逆らわないようにやるのですが、別にいいでしょう。あまりこんなことに時間をかける訳にはいかないですし。
さっきせっかくつけた頭のビニール袋を外します。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったタオルをどけて、一度彼をうつぶせにします。最初は後頭部からやります。体毛とは違いある程度の長さがあるので、はさみで切ってからじゃないと剃刀じゃ歯が立ちそうにありません。
髪をはさみで切り、剃刀で剃っている間も彼は私に何かを言ってきます。不思議とそれに対して何かを思うことはありません。命乞いをしているような気がしますが、特に気にならないのです。命乞いをされたことは初めてですが、物語の中の悪役はこんな気分なのでしょうか。
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