第9話 しかたありません
拘束しながら脱がせるのは無理そうです。裁ちばさみで切るしかありません。小学生のころに買った裁縫セットを持って来ていて本当に良かったです。
まずは上から切り、それからズボンに移ります。下着はナプキンのためにとっておかないといけませんから最後です。
彼は喚いて暴れようとしていましたが、簡単なものとはいえ拘束された状態の抵抗なんて大したことはありません。大したことはないのですが、肌を切ってしまったらいやですし、暴れるのはやめてほしいものです。
彼が何かを言おうと口を開いたところを見計らい、タオルを突っ込みました。噛まれないようにさっさと手を引き、あっけにとられた彼がタオルを出そうとしないうちに後ろで結びます。これで彼の言葉はだいぶ遮ることができました。
ただ懸念していた通り、喋りにくいだけでそれなりに声は出てしまうようです。少し迷った挙句に手を出さなかったホールギャグなども注文しておけばよかったかもしれません。作業本番前にかぶせる予定のビニール袋とタオルたちでどうにかなることを祈りましょう。
正直他人の下着に触れるのはかなり嫌です。しかし垂れ流しにさせる訳にもいきませんし、気合を入れましょう。さっさとやってしまった方がマシなはずです。彼の腕の拘束を一時的に外さないといけないので、慎重にやらないといけません。腰のあたりと下着の上あたりをビニール紐で縛っておきましたので、片方ずつやればどうにかなるはずです。
まずは左腕を外し、下着を拘束具がくるあたりよりも下におろします。拘束を元に戻したら、右腕に移ります。
しっかりと拘束されているのを確認したら、肛門部分と尿道部分をカバーできるように二枚ほどナプキンをはりつけました。おそらく履かせるまでにずれるでしょうから、手を入れて位置を修正してあげなければなりません。嫌ですが、諦めましょう。
心を無にして彼の下の準備も終えました。
返り血をどうするかという問題について、最初は血抜きとやらをすればいいのかとも思いました。でも、つるす場所はないしですし、初心者の解体に時間がかかるのは分かりきった話なので、できる限りは生かしたままさばいていきたいのです。
完璧を目指すなら、事前にイノシシなどで解体の練習をしておいた方がいいでしょうね。女子大生がそういった場に立ち会うなんて機会はそうそうないでしょうし、今の今まで思いつきもしなかったので、今回はあきらめることにします。次回があれば、次回への反省としましょう。
返り血については諦めて全裸で対応することにします。最終的にはシャワーで流すことになるとは思いますが、他人の血でお風呂場が汚れるのは少し不愉快なので、彼に使ったタオルで先にある程度は拭いておこうかと思います。
脱ぐ前にちゃんと彼の顔を隠さないといけませんね。さっさとビニール袋をかぶせてしまいましょう。それとタオルも。
一階に戻ったついでに浴室の準備も終えてきました。
床に血のしみができるのを防ぐために廊下に新聞紙を敷きました。それと地下室と浴室、それと台所周辺のカーテンも閉めましたから、不意の訪問でもなければ大丈夫です。一応、浴室の電気をつけて、ラジオを小さく流したので、もしものことがあっても入浴中だと察してくれるのではないでしょうか。
最後にゴム手袋とマスクをつけたら、地下室に戻ります。
それとついうっかり忘れていたクーラーボックスも。これも倉庫から見つけたものでした。ゴミ袋をかぶせてありますから、血で汚れることはないでしょう。
私の足音に彼はびくりと身体を揺らしました。
袋の中からくぐもった声が聞こえますが、意味のあるものはなにも聞こえてきません。あれでどうにかなったようです。
さて、もう一度脳内でこれからの工程を予習しましょう。
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