第8話 準備はしっかりとやりましょう

 あの拘束ベルトたちを装着させるのには成功しました。現在、彼は部屋の中央で仰向けになっています。ようやく彼も声を出せる程度に怪我の痛みに慣れてきたようで、私に対して罵詈雑言を浴びせかけてきます。これが今でよかったです。もう少し回復が早かったらすべてが水の泡になるところでした。


 私は彼を地下室に置いて、必要な道具を運び始めました。


 まずは地下室にあった電動のこぎり。これが今回メインで使う道具になります。親戚が庭の木の手入れ用に買ったようですが、一度も使われていないようです。箱から一度も出されずにほこりをかぶっていました。ホームセンターで替えの刃も買ってあるので、途中で刃がだめになっても大丈夫です。バッテリーもちゃんと充電済みです。

 次はこれまた倉庫に眠っていた中華包丁です。随分厚手のもので、調べてみたら骨を切るのにも使えるようです。切るというよりも叩き切るためのもので、綺麗に切れるかというとあまり期待はできませんが、まあ多少骨が砕けてしまっても構わないでしょう。ただ結構重いので、長時間使うのは厳しそうです。

 最後にちょっとおかしな形の包丁です。これは中華包丁と同じ箱に入っていました。箱の大きさからすると、ほかにも数本包丁が入っていたようですし、包丁セットのようなものだったのでしょうか。これは調べてみたところ骨スキ包丁というそうです。骨から肉を切り取るのにつかうようです。確かにこれと中華包丁は普段使いは難しいでしょうから、箱にしまいっぱなしになっていたのでしょう。

 あとは新聞紙やビニール袋、チャック付きの透明な袋、あとは生理用ナプキンを持ってきました。ナプキンについては血の処理に使うつもりです。乾かないうちにさっさと処理してしまいたいので、一緒に持ってきました。足りないあるかもしれませんが、とりあえずはこれでいいでしょう。



 豚肉を食べたいのと、豚を殺したいのがイコールではないように、私も別に彼を殺したいわけではありません。しかし、私には彼を生かしながら食すなんて技量はありませんので、当然殺してしまうことになります。

 悲鳴や表情、失禁やその他もろもろの恐怖に対する身体の反応は見たくありません。自身の身内ならほかの反応も出るのでしょうが、赤の他人の死を見てもその場限りの同情とずっと続くであろう不快さがせいぜいです。きっと悲しむことはできても、最終的に残るのはトラウマだったりと不快なものばかりです。


 見たくはありませんが、それを完全に防ぐことは難しいでしょう。ですが、できる限りの対策はしようと思います。


 まずは彼の声を封じましょう。これは簡単です。いらないタオルを猿轡にしましょう。多少声は漏れるかもしれませんが、これは次の対策でどうにかなると信じています。

 顔はビニール袋をかぶせようかと思います。ついでに隙間にタオルを入れておけば、漏れた声もだいぶ小さくなるでしょう。

 失禁やらなんやらの下の処理は内臓の処理の次に気が重いのですが、そうも言ってられません。放っておけばそれだけ匂いが酷くなるでしょうし。これについてはおむつを使うという方法も考えたのですが、数個使って終わったあとのおむつの行き場がなくなるので、夜用の生理用ナプキンを使おうと思います。多少不安は残りますが、下にブルーシートがありますし、最悪すぐに処理します。


 ほかにもなにかあるかもしれませんが、思いつかないので行き当たりばったりでどうにかしようと思います。


 まずはとにかく彼の服を脱がせないといけません。

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