第11話 考えてみればこれも準備ですね
全てもとに戻し終えました。ようやく始められます。
まずは脚です。膝の関節から切り落とすのは難しそうなので、膝下を切ろうと思います。
おおよその場所を決めたら中華包丁で骨に当たるまで切っていきます。これが案外切りやすいもので、体重をかければ難なく筋やらなんやらを切ってくれます。最初の小さな抵抗のあと、何度か刃の落ちるスピードは落ちますが問題ありません。
無視できない量の血がブルーシートに広がります。血を吸い取るのは片脚が終わってからのつもりです。いちいちやっていたらきりがありません。
かなり硬いものにあたりました。これが骨でしょうか。では、一度力を込めて傷をつけておきましょう。のこぎりでここから骨を切り落とせばスムーズにいけるんじゃないでしょうか。何かで見た受け売りなので、果たしてこれが人間相手にも通用するのかは分かりませんが、やらないよりはいいような気がします。
彼は刃を当てた最初こそ緊張して身を固くしていましたが、今は肉の間で刃が動くたびにはねるようにして私の邪魔をします。どうせ大した抵抗はできないでしょうが、これで私が怪我したら堪りませんし、太ももあたりに片膝を載せて押さえつけることにしました。
電動のこぎりのスイッチを何度か握ります。大丈夫そうです。案外音は小さいものなのですね。
これは包丁のように背を左手で押し込むように補助することはできませんが、だからこその電動のこぎりなのです。女性でも簡単、という謳い文句を信じてみましょう。
のこぎりをゆっくりと先ほどの印までもっていき、スイッチ握りこんでゆっくりと切り下していきます。なんの抵抗もなく切れていきます。
数秒後には刃が全く質感の違うものを噛み始めたので、慌てて止めました。どうやらもう切れてしまったようです。上からだとほとんど分かりませんが、おそらくはかなり綺麗な切断面なのではないでしょうか。
また中華包丁に切り替え、最後までいきます。今度は先ほどよりも慣れたようで難なく皮までたどり着きました。
どうやらこの包丁は皮を切るのは苦手なようです。刃を前後させますが思うように切ることができず、結局少し汚くなってしまいました。
切り落とした膝下は思ったよりも重かったです。手のひらでバランスをとるように立ててみようとしましたが、まだ片方が終わったばかりなのを忘れてはいけません。血の処理をしたら、さっさともう片方に移りましょう。
クーラーボックスの中のごみ袋に両ひざ下をしまいました。切断面からの出血はひどく、もう彼の胸の動きもほとんどありません。早く終わらせないといけませんね。
次は腕です。予定では肘から下を切るつもりでしたが、少し変えます。最初から肩下を切ってしまおうかと思います。
手と足がなければ抵抗も小さくなるだろうから、先にそこを切ってしまおうと考えていました。どうせあとで切り離すのだから、先に切ってしまってもいいだろうとも。
でもこの時点でまともに動けないようですし、さっさと目的の部位を外して内臓の処理に入ったほうがいいかなと思ったのです。脚のときは手の拘束のために股関節下から切り離すわけにはいきませんでしたが、腕ならどちらにしろ問題はありません。
腕と脚ではまるで太さは違いますが、やることは同じです。さらに、これで骨を切るのは三回目になるわけですし、すぐに終わるでしょう。
まずは中華包丁で骨まで、そして骨に印をつける。次に電動のこぎりで骨を切り落とす。最後に中華包丁に持ち替えて切り離す。
脚のときにあった高揚感のようなものはかなり薄くなっていました。今はただ、さっさと終わらせてしまいたいという気持ちが強いです。本番は肉を料理し、食べることです。解体作業は前準備過ぎないわけです。まだ面倒という気持ちはありませんが、もしそういうものが湧いてきたら、どんなご飯を作るかを想像して乗り越えましょう。
あっけなく腕を切り終え、少したたんでクーラーボックスにしまいました。
もう彼は動いていないようです。どれが直接の原因かは分かりませんが、これだけ出血していればそりゃ生きてはいないでしょうね。
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