第2話 掃除をしましょう
一人暮らしにも慣れてきて、これは免許をとらなきゃいけないなとか、自炊にも少し飽きてきたなとかを考えられる程度の余裕ができてきました。入学式まではまだありますし、暇つぶしも兼ねて地下室の掃除に手を付けてみてもいいかもしれません。とにかく車がないと暇をつぶす場所にもいけないのです。
地下室はほこりっぽく、なんだかよくわからない書類や写真の入った重い段ボールに、コレクション目的なのかそれとも捨てるのが面倒だったのかは分かりませんが、大量のワインの瓶が転がっていました。これは捨てるのにも時間がかかりそうです。
とりあえずは近くの段ボールの紙類を縛ることにします。重すぎると階段をのぼるのも、収集日に運ぶのも大変ですし、適当な量を見極めなければなりません。動画サイトにある最近見始めた朗読動画をおともに、作業を始めました。
同じような作業が続き、さすがに飽きてきました。同じ大きさの本をまとめ紐でくくる。紙を紙袋に集める。開いた段ボールを解体する。それの繰り返しばかりです。これが自分の部屋の片づけだったら、思い出に浸ったりと飽きはないのでしょうが、ここじゃそうもいきません。
作業が何日も続き――というのは少し盛った表現ですが、もう一月ほどこの地下室に籠っていた気がしてきました。ようやく部屋のゴミ出しから掃除へと移ることができたので、少しは楽しくなってきたところです。
さて、暇つぶしも兼ねてこの地下室を片付けてきたのですが、空っぽにしたところで何に使うかは決めていません。そもそも学生の一人暮らしなので、寝室とキッチンダイニングとお風呂とトイレと洗面所があればすんでしまうのです。地上部分の部屋もいくつかは全く使っていません。ただ、何に使おうという妄想は楽しいもので、掃除をしながらいろいろと考えていました。
例えば、この部屋にテレビや周辺のものを持ち込んで大音量で映画を見るというのはどうでしょう。実家ではうるさいと言われてなかなかできませんでしたが、アクション映画を大音量で見られるとしたらとても素敵なことです。ほかにはホラー映画も楽しそうです。地下室というと、ホラー映画では何かがいそうなものですが、そこで見るのは乙なものでしょう。
書斎にするのもいいかもしれません。ちょっといいスピーカーを買って音楽を聴きながらというのもいいんじゃないでしょうか。本棚を一面に並べた書斎――いつかは欲しい部屋です。
そうだ。ホラー映画で思い出したことがあります。地下室、しかもここは防音もしっかりしているみたいです。ここからなら何をしても外には聞こえないんじゃないでしょうか。もし私が殺人鬼だったら、ここで獲物を解体するのでしょうね。
そういえば、彼らが人間を解体するのに使う台だったり、あの肉屋のフックってどこで手に入れているんでしょうか。通販サイトで売っているものなんですかね。私が思いつく代用品だと、歯医者のあの椅子だとか、産婦人科のあの分娩台とかでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます