第23話 天音サイド~お散歩デートの後は
凛が僕とデートに行く為に着替えに立った。
凛はいつも黒か紺の部屋着を着ている。体型がわかりにくいかなりダボッとしたやつで、かなり楽なんだろうとは思う。
思うけど……、僕は気づいてしまった。
あの下、………………下着をつけていない。
ブラジャーはわかる。うちの姉達も家ではそうだから。ただ、凛は知らない。たまに主張しているヤツの存在を! 伸びとかした時に、さりげなくTシャツを押し上げるヤツを!
一度でもヤツを意識してしまうと、僕の妄想は止まらなくなる。だってしょうがないじゃん。まだ二十二だもん。
凛に会うまでは、性欲は薄めかほぼないんじゃないかって思っていた。本当~にその気になるのが大変だったから。相手が頑張って頑張ってひたすら頑張ってなんとかって感じで、はっきり言って自分でした方がいい。
そんな僕だったのに、今じゃムラムラを抑えるのに必死だ。いつだってお祭り状態になるたがる下半身を類稀なる自制心で捩じ伏せ、さりげなくバレないように観賞するスキルを習得し、表情は通常使用のアルカイックスマイルを貼り付ける。
あぁ……修行だ。
そして、さらに気づいてしまったんだ!
何気なく屈んだ時に、その素晴らしいヒップを後ろからガン見していたら(もちろん気づかれていないから出来る)、パンティラインがない?!
Tバックって可能性もある、それはそれで鼻血ものなんだけれど、然り気無く腰に手をやって確認したら……。
ノーパン!
ノーパンティ!!
これに気づいてしまったら……!
すみません! 降参です! 二人っきりのこの空間で我慢なんかできないッ!!!
「凛さん、たまにはデートしませんか? 」
緊急避難の為の発言だった。
本当はデートなんかするより、凛と二人っきりでいたかった。二人で出かけるのも楽しいんだろうけど、何よりも凛を独り占めできるし、最近僕の前でだけは表情が柔らかくなる凛を誰にも見せたくなかった。
でも……だけど、仕方ないじゃないか。
このままじゃ暴発しちゃうから!
★★★
「そうだ、小学校からの幼馴染みってどんな人? 」
「興味ある? 」
手を繋ぎながら土手を散歩していたら、凛が野球している少年達を見ながら言った。
「……そうね。天音君の男友達が想像できないから」
その言葉に思わず苦笑してしまう。
確かに、僕の回りは女の子ばっかりだ。誰とでもフランクに話すから男の知り合いも多いけど、休みの日に遊ぼうとか男同士で飲みに行こうって程の知り合いはいない。だいたいは、女の子との仲介役にされることが多かった。
ただ、絶対に合コン等には誘われない。まあ必要ないし、あまり女友達が増えすぎてもウザイから問題ないけど。
「
「男臭い? 」
僕は最近会っていない元康の顔を思い出していた。
小学一年から奇跡の六年間同じクラスのあいつ。佐々木と笹本で、出席番号は常に前後だった。
僕は小さい時は本当に小さくて(今でも大きくはないけど……畜生)、見た目は今以上に女の子だった。
それに比べて元康は小さい時からデカくて、いまだにジリジリ成長してるって恐ろしい奴。いつか二メートル超えるんじゃないだろうか。
見た目はワイルドな二枚目。
勉強は苦手だけれど、運動能力が半端ない。そして単純・純情一途な性格をしている。
「身体デカくて、骨太筋肉質で、ワイルドな感じ。僕とは正反対な見た目だね。思い込みが激しいけど、悪い奴じゃないよ」
「ワイルド……なんだ」
えっ?
もしかしてワイルド系がタイプ?
僕と対極だよね。
「凛さんはワイルド系が好きですか? 僕、身長はこれ以上伸びないし、筋肉もつきにくい体質だけど、筋トレ頑張ります。笑顔とか封印して、ニヒルにしてればワイルドになれるかなぁ? 」
「天音君がワイルド? 無理は止めた方がいいわ」
無理……無理かぁっ。
そりゃそうだけど、凛に論外と言われているようで凹む。
確かに超絶キレイな凛の隣りには、長身でワイルドっぽい元康みたいな男のが似合うのかもしれない。
僕みたいに可愛いだけじゃ……。
なんだよ、元康なんか初恋が僕とかイタイ奴じゃないか。まぁ、それくらい小さい時は女の子にしか見えなくて可愛かったからなんだけど、会ったその日に「可愛い! 好きだ! 」とか告白してきたマセガキで、男だって怒ったら、「やっぱり可愛いから友達になって」と言われた。
それからずっと親友をしているけど……、凛には会わせたらダメな奴だな。
うん、絶対に会わせない!
「凛さん、そろそろ買い物して帰りましょう。今晩は何食べましょうか? 」
僕は元康についての会話を切り上げたくて、意識を夕飯へと移行させる。
「夕飯かぁ。アヒージョにでもしようか」
「なら、スパークリングワインでも買いましょう」
「いいね」
よし!
今日は久しぶりに凛に沢山飲ませよう。酔っぱらった勢いで……。
少しは進展したっていいと思う!
少しづつ距離を縮めて、やっと抱きついても固まらなくなってきたんだもの。なんたってお付き合いしているんだから。
あと少し……本当に少しかな?
ため息を飲み込んで、駅前のスーパーへ足を向けた。
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