もしかして怒ってる…?

普遍

好き好きだーいすき!

恋する私の1日のルーティーン。


まず起きたら最初にスマホを手に取る。まぁありきたりだよね!スマホを開いたらBGMを流して起き上がる。スマホを持って洗面台に行って顔を洗って着替えたら、朝ご飯を食べながらスマホで情報を確認して家を出る。


玄関のドアを開けたら差し込んだ太陽の光で目がちょっと痛いけどとても気持ちの良い朝だ。私は通学路を浮かれながら歩く。もう少しで大好きなあの人に会える!嬉しさで歩く速度が速くなる。


駅のホームに着いた。私は隣の扉の列に並ぶ好きな人を盗み見る。あぁ、今日もあの人はカッコいい!私は好きな人を目前にしている恥ずかしさからスマホで顔をちょっと隠しつつも、いつものようにあの人を見つめる。見つめすぎたのかあの人も私の方を見てきた。これってもう両思いかも!幸せだ。


あの人は勉強が得意でスポーツもできる。しかも優しくてまさに完璧!でもちょっと抜けてるところもあって…そんな所がかわいいの!


学校に着く。残念ながらあの人とは違うクラスだけど大丈夫。私はあの人の事を想いながら授業を受ける。


そんなこんなであっというまに放課後。

帰宅部な私はさっさと学校を後にして家に帰る。玄関のドアを閉めてリビングをみるとあぁ、今日も部屋がゴミで散らかってる。しょうがないんだから!私は部屋のゴミを片付けて掃除をする。テレビ台の上にいつもはないビデオカメラが置いてあったけど無視していつも通りに洗い物をして、夕飯を作って、一通り家事を終えたら買い物の為に家を出る。


帰宅。私は靴を脱ぎ家に入る。買ってきたコンビニのご飯を机に放り出しパソコンを開く。そろそろ帰ってくる時間かな。真っ黒だった画面がパチンという音と共に明るくなる。そこには先程まで居た部屋が映し出されていた。大好きなあの人も映ってる。おかえり。部活お疲れ様!今日もかっこいいね!だいすきだよ。

画面の中にいる彼に話かけながら私はコンビニの袋をあさりサンドウィッチを食べる。昨日のお昼休み、カレーが食べたいって言ってたよね。リクエストにお応えして今日はカレーにしてみたよ!にんじんは嫌いだよね?でも好き嫌いはダメだから見えないくらい細かくして入ってるよ!これくらいなら大丈夫でしょ?またリビングゴミだらけだったよ?ちゃんと片付けて置いたよ!ほら、私貴方のこと色々考えてる。私は貴方の為に尽くせる、なんだってできるよ。だって大好きだからね!画面越しに彼に話しかけるけど当然反応は返ってこない。寂しいなぁ。


画面の中では驚きで固まって動かないでいる彼がいる。大丈夫だよ、そこにはもう誰もいないから。安心してご飯食べて寝て明日も生きてね。


私はシャワーを浴び、布団に入る。スマホで彼の部屋につけたカメラによって映される映像を見ながら眠りについた。


これが私の毎日のルーティーン。

普通でしょ?


そんな普通な日々を続けた。

その日も私の"普通"の1日の始まりだった。

いつも通りに朝起きてBGMとして昨日のあの人がお昼休みに友達と話していた会話を録音したものを流しつつ身支度をする。ご飯を食べながら彼が以前、家にスマホを忘れて学校に行った時にインストールしておいたGPS機能のあるアプリを使って彼の位置を確認して同じタイミングで駅に着くよう家を出る。

彼は両親と離れて一人暮らしをしている。私も彼と同じ駅を使う為引っ越しをした。彼の部屋の一つ上の部屋だ。えへへ、同棲だね。


同じところに住んでるけど私は彼を見ているだけで十分。だから下手に接触しないように彼と同時には家を出ない。大好きだけどね!嫌ってる訳じゃないよ!ちょっとスタートは遅れるけど私の歩くスピードが速いのかほとんど同じ時間に着くの。運命かも!いつも並んでる所をチラ見しては今日も出逢えた嬉しさと好きな人が目の前にいる恥ずかしさから口元に持って来たスマホで盗撮する。この写真を見るとどんな時でも元気が出るしなんでもやってやる!頑張ろうって思えるんだ。


ちなみに彼と学校は違う。彼は私の通う学校の一つ手前の駅で降りる。ねぇ、気付いてる?たまにね後ろに居るんだよ。私。満員電車の中、背中に感じる彼の暖かさを感じる時間が愛おしい。あれ、今日震えてるね。背中越しにでも震えが伝わるよ。風邪引いたのかな?心配だな。今日は栄養満点なご飯にするね!


残念ながら同じ学校では無いが彼のスマホを通して学校生活は知ることができる。これって同じ学校生活をしているのも同義では無いかな!

それに彼の家にだって何度もお邪魔してるし…ご飯だって作ってる!これって、これって…つつつ付き合ってるよね????!

だって彼の電話番号だって知ってるしいつも夜中にコソコソとえっちなサイトを見てることも知ってる!スマホのパスワードだって知ってるし、彼の寝顔だって見てるし、笑った顔も怒った顔も怯えてる顔も精神的に参ってる顔も全部知ってる!どんな表情をしていてもあの人はカッコいいの。だいすき!


そんな私の"普通"が崩れる時、それは突然だった。


ピンポーン


ある日の晩、訪問者を告げるチャイムが鳴る。いつも通りに家事をやり終えた私は自宅に戻りそろそろあの人が帰って来る頃だとパソコンの前で待ち構えていた時だった。


「はい?どちら様ですか?」


「警察の者です。ちょっとお話しよろしいですか?」


私は戸惑う。私は何か悪いことをしたのだろうか。いや、大丈夫だ。私は何もしてない!堂々としよう。


扉を開ける。そこには警察官が1人居た。


「はい」


「〇〇警察の者ですがちょっと北川優斗さんについてお話があります。」


思いがけず大好きな人の名前が警察官から出てきて不安になる。あの人に関係する話!?それは大変だ!早く聞かないと!

 

「中にどうぞ!」


「失礼します。」


警察官を家の中に招き入れた私はお茶をもてなす。ずっと仕舞ってたお高いお煎餅も出すのを忘れない。


そしてお茶を出し終えた私はその警察官の男の正面の席に着く。


警察の人も私も取り敢えずお茶を一口飲み喉を潤しお互いの言葉を待つ。


緊張した空気の中私は切り出す。


「あの…それで北川優斗さんに関して何か…?」


「あのですね、


端的に言うと貴女を住居不法侵入罪で逮捕する事になりました」


…は???この目の前の男は何を言ってるんだ?


住居不法侵入…?誰が?私が?住居不法侵入…?そんなことあるわけないそれは事実とは異なる。


混乱して声が出ない私に警察官の男は続けて言う。


「貴女、北川さんのストーカーですよね。北川さんもね、精神的に不安定になって居るんですよ。貴女のせいで。貴女が勝手に家に入って部屋の片付けをしたり夕飯を作ったり。前々から被害届が出されては居たのですが証拠も無いし、取り合っては居なかったのですがね。北川さんが家に設置したビデオカメラに家主不在の間家に上がり込み家事をする所が映ってましてそれを証拠として住居不法侵入罪で貴女を逮捕する事になりました。」


男は書状を机に出す。


「署にご同行頂けますね?」


「はい…」


私は頷いた。冷静に答えてはいたが頭の中ではどうしてと疑問でいっぱいである。


なんで?どうして?あのビデオカメラそういうことだったの…?私はあの人が大好きなだけなのに、尽くしてただけなのになんで?逮捕?一緒に居られなくなる?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

どうしてわかってくれないの


許さない


私とあの人の邪魔をするものは許さない。前にあの人に近付こうとしてたあのゴミ女はインスタを炎上させて社会的に静かにさせてあげたしあの人が迷惑そうにしてた女の家に誰も居ない時火をつけたこともあった。そうして障害物を自分自身ぶち壊して来た。今回もそうするだけだ。


そんなことを考えて居たら家を出ようと私の前を歩き玄関に向かう警察官がドアまであと5歩という所で倒れる。さっき出したお茶に体が痺れる粉を入れて置いて良かった。


私はキッチンから包丁を持って来て警察官の上着やベストを外す。そして背中を刺す。小さく呻き声が上がって身を悶えさせる。また刺していく。私と彼の邪魔はさせない。男の血が手と服に付く。汚い。


何回か刺したら男は完全に動かなくなった。これで邪魔する人は取り敢えずきえたね。


あはは…私ひと殺しちゃった。犯罪者じゃん。どうせ捕まってあの人と一緒に居れなくなるならあの人も殺しちゃおう。一緒にいこう。私は天国に行けないから地獄に行くけどついて来てくれるはず。私たち両思いで運命だからきっといいよって言ってくれる。あの人優しいもん。


警察官の背中から包丁を引き抜きそれを片手にまだ帰って来ていない彼を迎えに外へ向かう。


案の定、いつものルートで帰宅途中の彼を見つける。彼は私をみて固まった。私はそんな彼に訴える。


「ねぇ…どうしてこんなことするの…?私こんなにあなたの事好きなのに、大好きなのに…!!」


彼からは何の反応もない。逃げもしない。


「ぁ…もしかして怒ってる…?勝手に掃除しちゃったの怒ってる??カレーににんじん入れたの思ってる?ごめんね貴方の為にやったんだけど…今度からは気をつけるから…だから…」


彼を公然の場で押し倒す。彼の素敵な目には恐怖の色が見えた。私はそんな彼の胸元に包丁を当てる。

今度らいせは幸せになろうね!」



グサッ


愛しい彼の血液が流れ出る


グサッグサッ


何度も振りかぶる


グサッグサッグサッ


パトカーのサイレン音が聞こえる。辺りが騒然としている。


そろそろ私もいかないといけないね。


彼の体から引き抜いた包丁を今度は自分に向け自分の下にいる彼の頬を撫でる


「えへへ、愛してる!」


そう言って


私の血液が溢れるのを最後に私の視界は真っ暗になった。






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もしかして怒ってる…? 普遍 @purinumai

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