純粋なる戦闘狂。その名を――

 その男は生前、戦いの中に身を置くこと至上の喜びとした純粋なる戦闘狂だった。

 物心ついた時から力比べでも剣技でも男に勝てる者は一人もいなかった。男は真面目に働く事や縛られる事を嫌い、やがて自分を打ち負かすような強者を求めて旅に出たのだ。

 そして、国の剣士隊に所属する名うての剣士や、噂を耳にした強者へ次々と勝負を挑み力でねじ伏せてきた。何人殺めたのか男は覚えていない。百は下らないのは確かだ。

 果てに矛先はとうとう英雄フェンブルの血を引くヴェスター王家へと向けられる。

 王家一の戦士に勝てば、自身がまごうことなき最強の存在になると証明できるからだ。

 されどいざ王都へ向っていた途中、男を討伐せんと出撃したメネス王国剣士隊の一個大隊に囲まれてしまう。男は大勢を相手に奮戦したがいかんせん数には勝てず、一斉に四方から切られて討死した。

 死して瞳を閉ざす時まで決闘への無念を残した戦闘狂。その名を――

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