第2話 初見殺しダンジョン
「...ここは?」
どうやら俺は魔王が作った魔方陣によってダンジョン前にワープしてきたらしい。ルーキー勇者しか来ない初級ダンジョンらしいから大丈夫とは思うけど...
「俺、ミミックとしての戦い方知らないんだけど!」
どうしよう...とりあえずダンジョン入ってみよう。俺は石の階段を下り、ダンジョンへ入ってみる。宝箱に入ったままの移動はそんなに不便ではなく、むしろ疲れないので燃費がいい。
中に入ってまず最初に目がついたのは大きな扉があり、その付近には2本の通路がある。どこかに隠れようと思っていたそのとき、
「おーい、もしかしてミミックさんですかー?」
「ん?」
急に声が聞こえたので一瞬冒険者が来たのではないかと恐れたが目の前に現れたのはデカいコウモリのような...
「俺はデビルのブロッドっす!このダンジョンではそこの大きな扉の先にボスがいるっす!まずは挨拶に行くっすよ!」
「ありがとうございます、俺はミミックのジャックです、でもそこの扉は鍵が閉まってませんか?」
「魔族はみんなダンジョン扉はすり抜けられるっすよ!あとそんな固くならなくていいっすよ~軽く行くっすよ~」
そう言ってブロッドはボスが待つという部屋へ意図も簡単に入っていく。
俺も後ろから続いてボスの部屋へと入るのを試みると、思ったよりあっさり部屋へ入ることができたかと思えば、目の前にはブロッドよりも幾分大きなデビルとその周りを囲むモンスターが数体いる。
「よし、これで全員だな。これより指示を始める」
するとボスらしき大型のデビルはそれぞれモンスターに配置を指示する。が、
「ん?ミミックか、お前は俺の後ろの部屋から見ていろ」
と言われてしまったため、俺はボスの部屋の更に奥にある、いわゆる報酬部屋で冒険者を待ち構えることにした。恐らくその前にボスが食い止めると思うが。
「それにしても暇だなぁ...」
暇になるとどうしても色々なことが頭に浮かんでくる。うーん...
どうして転生者は俺が選ばれたんだろう?
(...サン)
どうして俺は数あるモンスターがいるのにミ
ミックになったんだろう?
(...ックサン)
そもそもザーベルの目的はなんなんだ?
(...ジャックサン)
一瞬見えたあの顔、多分女性じゃないかなあ
(ジャックさん!!)
ん!?
急に名前を呼ばれて驚き、宝箱から顔を出してみる。が、誰もいない...
声は恐らくブロッドの声で間違いないと思うのだが...
(ジャックさん!これはモンスター間だけ聞こえる特殊音波で別のフロアから声を届けてるっす!)
魔族はそんなこともできるのか...
(目を瞑ればダンジョン内の別フロアの様子も見れるっす!ダンジョンは魔族にとって有利にはたらくんすよ!今ジャックさん宝箱から顔だしましたね!)
宝箱から顔を出したのが見られていたことを聞いて急に恥ずかしくなってしまった...
それはさておき、特殊音波ってどう出すんだろう、意志疎通ができるのはかなり重要なことだろうから早めに習得したいな
(あ、もしかして返事ができない感じっすか?下を噛みながら声を出すっす!大丈夫っすよ、痛くないっす!)
(こ、こうか?)
(おー、よかったよかった、聞こえてきたっす!で、で、さっき勇者パーティがダンジョンに入ってきたみたいっす!)
(え?そっちは大丈夫なのかよ)
(俺がいる方とは逆の方向に行ってるみたいだから今は大丈夫っす!ただ...)
急に声色が変わり嫌な予感がする...
(ただ?)
(マズイ!勇者パーティが来たみたいっす!)
(お、おい!)
返事は帰ってこなかった。
フロアの様子を見てみると、ブロッドと勇者パーティが戦闘している。やはり戦闘中に会話は厳しいか。そう思いながら戦闘を見ているとどこか様子がおかしい、ブロッドが攻撃しているはずなのに一向に倒れない。やられている気配はあるのにダウンしない。
どういうことなんだ...
パーティは4人、勇者、魔法使い、アルケミスト、ナイトといったところだろう。個々の動きは強くないように見える。が、
よく見ると4人パーティのうち3人が戦闘し、1人は薬草で回復し続けているのがわかった。そしてやられそうなメンバーが回復し終えたメンバーと交代し、また薬草で回復している。チクショー、一人ひとりは弱いはずなのに...
「うぐっ!」
長期戦に耐えられなかったブロッドはアルケミストのポイズンでやられてしまい、遺体は残らず消滅してしまった。
嘘だろ...
(おい、聞こえるか?)
(はい、聞こえますボス!)
(ダンジョン内のモンスターは今、俺とお前しかいない。しかもパーティはほぼ傷ひとつない。こんなことはこのダンジョンでは滅多に起こらないぞ!)
(このダンジョンって突破されたことないんですか?)
(ああ、少なくとも初めて来る奴らにはな...おっと、そろそろ来たみたいだ。じゃあやれるところまでやってみせるぜ)
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