魔族最強の宝箱

ナイフ

第1話 転生先は魔王城

気がつくと俺は冷たい床の上に倒れていた。


「フフ...目が覚めたか?」


数秒間が空いて俺に声をかけられていることに気がつく。少し低めの女性のような声だった。


「は、はい!」


慌てて俺は立ち上がる。そして前を向いて初めて目の前にいる人物の姿を見た。


「おはよう。私は魔王のザーベルだ。お前は私によってこの世界へと導かれた」


・・・魔王?世界?何の話をしているのだろうか。俺は状況が掴めない。ただ、俺の目の前にいるのは仮面をしてコートのような物を着ている人物が座っている。そして強いオーラのようなものが漂っている。それだけが理解できた。


「簡単に言うとお前は異世界転生、つまり死んだお前に私が第二の人生を用意したということだ」

「俺、死んだんですか?」


俺は耳を疑ったが、続くザーベルの説明によると俺は電車に跳ねられて死んだらしい。そして俺は、ザーベルの召喚により元々いた世界とは別の世界に転生したそうだ。


「魔王って聞くとなんかファンタジーストーリーみたいですね」

「ファンタジーストーリー?」


ザーベルは首をかしげる。ああ、そうかきっと俺は本当にフィクションの世界に入り込んでしまったんだな。


「勇者が魔王と戦ったりする話のことです」

「フフ...お前のいた世界にはこの世界のような話があったのだな。ならば話は早い。」


仮面越しだったためどんな表情をしているかは分からない。だが、何となくノリ気な態度が伺える。


「お前にはスキルを与えよう。そんなニンゲンの姿じゃ周りからも嫌われよう」


そう言ってザーベルが椅子から立ち上がると俺の手を握った。俺は仮面のザーベルが近づいてくると迫力を急に体感し怖くなったが俺の手を握るては優しかった。


「フフ...これでいい。」


数秒後、握った手を話してザーベルはそう言った。


「えっと...これで何が」

「自分の影を3秒見続けてみろ」


そう言われると俺は自分の影を見続ける。大広間の証明が高い位置に有ったため以外と短い影だった。そんなことを考えていると――


「えっ?」


――一瞬意識が途切れたが気がつくと、目に映る物が全て大きく見える。いや、これは俺が小さくなったのか?

そんなことを考えているとザーベルは水晶を持ってきて俺の目の前に差し出した。


「な、なんだこれは!?」


自分の姿はなんと真っ黒な小人だった。


「フフ...いい姿だ。お前は今日からダンジョンで勇者を討伐するモンスターだ」

「勇者を討伐するモンスター?」

「ああ、勿論報酬はそれなりにしてやる」

「ここで断っても逃がさないんでしょう?」

「無論だ...フフ...」


俺は少し悩んだ。逃げてしまってもいいんじゃないかと。だが―――


「この世界ではそういう生き方なんでしょう?じゃあやってみますよ」


―――浅はかな考えかもしれないが、まずは職についておけば安心だろう。


「良き答えだ。ではコレに入れ」


そう言って今度は木でできた箱を用意してきた。小さくなった俺の体なら確かに収まるサイズだ。少し躊躇いつつも恐る恐る入ってみる。


「これは...!」


なんとも居心地がいい。


「お前はダンジョンでミミックとして勇者を討伐してもらう。初めはルーキー勇者しか来ないから簡単な仕事だ」


なるほど、ミミックか...どうせならドラゴンとかキメラみたいなのが良かったなあ...


「了解しました!」


俺の声を聞くなりザーベルは今までつけていた仮面を少しだけ外して詠唱しだす。

すると俺の周りに魔方陣が出来上がる。当たり前だがこんなの今まで一度も見たことがない。壮観である。


「では、行くがよい!」

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