第7話 デートは仕事が終わってからね
サファイアに促され買い物に出たアタシ達。
先ず訪れたのが屑鉄屋。
小さな部品一個から巨大な構造物まで何でも置いてあるが、その全てにおいて共通するのが『壊れて動かないor用途不明』
つまり一般人にとってはゴミ同然なので有る。
「サファイア、こんな所で何を調達するつもり?」
「今探す。少し待ってて」
そう言うとサファイアは細かなパーツ類が無造作に金属製の箱に入れられて置いてあるコーナーへ向かう。
暫くいくつもの箱の中身をゴソゴソ漁っていたサファイアだが、その内いくつかの金属クズを持って戻って来た。
「ルビー。これを買って欲しい」
サファイアが両手に溢れんばかりに載せた、アタシにはゴミにしか見えない品々を掲げて見せてくる。
手のひらサイズの何かの装置と複数の電子部品。唯一解るのはガス式のハンダゴテ位かな?
「サファイア。買ってあげるのは構わないんだけど……これ何に使うつもり?」
「後で説明する」
サファイアにも何か考えが有っての事だろうし、まあ良いか!
「解ったわ、じゃあ買って来るね」
会計を済ませ次のショッピングへ向かう。
「次は何処へ向かいますか? お嬢様」
大袈裟に恭しい態度を取り冗談めかして聴いてみる。
「服を買って欲しい」
服!
今着ているサファイアの服は『ルビーと同じような服が良い』と言う本人の希望で揃えた物だが、本当はもっと女の子らしい服も着せて見たかったのよね!
アタシにはヒラヒラした格好は似合わないけどサファイアになら絶対似合うはず。
ウキウキした気分で古着屋へ向かい、どんな服が良いのか尋ねると『安くても良いから年相応に見える服』との事。
「どれが良いかしら。どれも可愛いし似合うから迷っちゃう!」
色々当てがって散々着せ替え人形状態にし、最終的には水色のノースリーブのワンピースに決まった。
フリルや大きめのリボンが付いたドレスとかも良かったんだけど普段着にはちょっとね。
「買い物は充分。部屋に戻って準備する」
「あら、デートはもう終わり?」
キョトンとした顔でアタシを見上げるサファイア。
「これはデートじゃ無い。作戦のための買出し」
「そうだけどね、アタシは楽しかったよ?
サファイアからおねだり何て珍しいしね」
「必要な物を買っただけ……
それに……」
俯き加減になり珍しく少し言い淀むサファイア。
「それに、デートなら仕事抜きでして欲しい……」
呟く様に小さな声でそんな事を言う。
はぅあ!
何と言う破壊力。この子いつの間にこんな恐ろしい技を身に付けたの?
「そうね、じゃあ今回の仕事が無事終わったらデートしましょう」
「良いの?」
「勿論! アタシがサファイアの頼み断る訳無いでしょ」
「有難うルビー」
そう言って腕にしがみついて来るサファイアは、はにかんだような笑顔を浮かべている。
なんだ、自然に笑えるようになったんじゃない。
もっと見せてくれれば良いのに。
貴方の笑顔はとっても素敵よ!
部屋に戻るとサファイアは本日の戦利品をテーブルに並べ始める。
「ルビー。工具を貸して」
アタシは荷物袋の中からドライバーやら何やらの入った工具セットを取り出す。
この手の工具類は遺跡探索の必需品。
目ぼしい物を手当たり次第にバラして持ち帰らなきゃいけないからね。
サファイアに工具を手渡すと早速何やら作業を始めた。
手のひら大の装置の蓋を開け、ゴチャゴチャした中身を取り出すと、他の細かな部品と照らし合わせながら、ハンダで固定したり取り外したりして行く。
「もしかしてそれ、直してるの?」
「そう」
「それは何に使う物なの?」
「出来てからのお楽しみ」
暫く作業に没頭していたサファイアだったが、最後に蓋を閉じてどうやら完成した様子。
「ルビー。発電機」
「はいはい」
言われた通り、荷物を漁って普段あまり使うことのない手回し式の小型発電機を渡す。
一応持ってはいるけど使う機会滅多に無いのよね。発電量も小さいし、第一電気を必要とする物自体ほとんどお目に掛からないから。
電気で動く機械類は過酷な環境のこの星では直ぐに壊れてしまう。
そして壊れた機械類を修理する技術は廃れて久しい。
とうの昔に直す事を諦めてしまったのだ。
サファイアは発電機のケーブルを謎装置の端子に繋ぎハンドルをクルクル回し始める。
「ルビーこれを持ってて」
そう言うとサファイアはアタシに謎装置を押し付け、部屋から出て扉を閉めてしまった。
「えーと、どうすれば良いの?」
アタシが困惑していると、手元の謎装置がザリザリ言い始めた。
え? なに?
『ルビー。聞こえる?』
!!!
突然装置からサファイアの声が聞こえ危なく取り落としそうになる。
『ルビー。聞こえない?』
「き、聞こえてるけど……」
『私の方も聞こえる。良かった、修理は成功』
それっきり声がしなくなったと思ったら、ドアを開けサファイアが何事も無かったかの様に戻って来た。
「どう言う事? これはなに?」
「それは通信機。離れた所にいても会話出来る装置」
そう説明して来るサファイアは少し得意げな顔をしている。
「すごいじゃ無い! つまりこれで教団内部に潜入してからも話が出来るって訳ね!」
「そう。ただし私からの声は聴こえても、私に声が伝わると限らない」
「どう言う事?」
「その通信機は出力が弱い。直線距離で200M程度しか声を送れない。途中に壁が有ると、もっと短くなる。
修理は出来たけど有り合わせの部品ではそれが限界」
そう言って申し訳なさそうな表情を浮かべるサファイア。
「そう……でも中の状況が解るだけでも全然違うわ。サファイアが潜入の手引き、してくれるんでしょ?」
「そのつもり。それと……」
『私は声を口に出さなくても通信機に声を送る事が出来る』
ビクッ!
またもや突然通信機から声がしてついビックリしてしまった。
「な、成る程。つまりバレる事なく伝えられるって事ね。後心臓に悪いから急にコッチから声出すの禁止ね」
「了解。ルビー」
これで潜入の準備は終わりかな?
そう思っているとサファイアは今日買って来たワンピースを取り出して来る。
「早速着てみるの?」
「違う」
そう言うとサファイアは事もあろうにワンピースの裾をビリビリ破き始める。
「ちょっと! 何やってるの!」
「ごめんルビー。でも必要な事」
ある程度破くと今度は床に投げ出しワンピースを泥や砂で汚して行く。
どうして? 服が気に入らなかったの?
「ごめんなさいルビー。もう一つだけお願い」
「な、なに?」
「私にルビーの過去をちょうだい」
……え?
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