自分と向き合う

 こんばんは、このはりとです。


 もう逃げるのは十分。そろそろ自分と向き合うとき、と、その気持ちをつなぎとめておけるよう、本エピソードを書き残します。


 拙作『あなたが振り向くまで。』を公開して以降、言い知れぬ不安に駆られ、物語名を見るのすら避けていました。物語が「読まれた」という事実を突きつける通知がおそろしく、しばらくはスマートフォンをサイレントモードにしていました。無音はやや不便ですので、今は、それまでに設定していた通知音を変更しています。当時の音を思い出すと、怖気がするくらいで。

 公開から少し時間が経ち、気持ちが落ち着いてきました。そこで、なぜそうまでおそれるのか、原因をさぐってみることにします。技量はいったん棚に上げ、残ったものに目を向けると、答えはあっさり見つかりました。

 わたしは、自身の内側から自然にわきだしたものの力によって物語を書いています。しかし、『あなたが振り向くまで。』は、外側からやってきたものが書く原動力だったのです。外側に向けて書いた、とも言えますね。わたしの「書く」動機は、自分が読みたいものを書く、ですので、読者はわたしひとりを想定しています。そう考えると、これは異質です。

 わたしが書いたはずなのに、まるで別人が書いたもののような錯覚に陥り、これはいったい誰が書いたものなのか、と、存在があやふやな状態でした。そんなものがわたしのワークスペースにあるのですから、強烈な異物感に襲われました。優しい友人が物語を読み、応援が届きます。ですが、心のうちでは「どうかもう読まないで」と祈っていました。その理由は単純で、『あなたに求めているのは、こんなお話じゃない』と言われるのが怖かっただけなのです。


 そんなわけのわからない闘いは、そろそろおしまいにします。たとえ自身のことが信じられなくても、応援してくれる友人を信じるなら、物語を受け入れ、認めるのが健全ですので。

 明日はお休みで時間があります。自分と向き合い、おそれを受け入れるため、ひとりの読者として拙作を読み直してみます。こういった不安に満ちたエッセイを書くのは、これを最後にしたいものですね。



 つづく

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