第4話 私は彼女アピールをしたい
アオくんは誰にでも優しくする。
困った人を見かければ、すぐに飛んでいって手助けをする。
その性格は昔からずっと変わらない。そして今も。
昼休み、お手洗いを済ませた後の帰り道。
私はアオくんとクラスメイトの女の子が廊下で一緒にいるところを見つけた。
「よかったら俺が持って行こうか?ちょうど職員室に用事があるところだったし」
どうやらアオくんは、クラスで集めた宿題用ノートを重そうに持っていたその子の代わりに職員室に運ぶ提案をしているようだった。
「え?いや悪いよ」
「全然いいよ。次の時間は体育だし、女子は早めに更衣室に行かないといけないだろ?」
「あぁ、そうだね……じゃあ、お願いしようかな。ありがとう、葉月くん」
そうしてアオくんはノートの山を受け取り、職員室の方へと歩いて行った。
その様子を見ていたもう一人のクラスメイトの子が、その子の方に寄ってきた。
「葉月くんってすごく優しい人だよね」
「うん。かっこよくて性格も良いってもう完璧だと思う」
「いいなぁ、私も葉月くんに優しくされたいや。イケメンにあんな風に優しくされたら惚れちゃうんじゃない?」
「実はもう惚れちゃってます♡」
そんな会話が耳に入ってくる。
「どうしてアオくんは、モテるような行動を平気でしちゃうのよ…………」
誰にでも優しくすることはいいことだ。
そんなアオくんだからこそ、私は彼を好きになったのだ。
でも、このままだと女の子全員がアオくんの魅力に気づいて、ライバルがどんどん増えていくばかり。
複雑な気持ちが心に飛び交う。
本当のことを言えば、アオくんを誰にも渡したくない。
嫉妬と独占欲が次第に増していく。
このモヤモヤをどうやって解消すればいいのだろう?
私は廊下に立ち尽くしたまましばらく考える。
「あ、そうだ」
♢ ♢ ♢
家に帰ると、私は早速自分の部屋に戻ってパソコンの電源を入れた。
「みんなにアオくんを諦めさせるために、アオくんは私の彼氏ということを全員にさり気なく伝えればいいのよ!」
私は彼女アピールができるアイテムをインターネットで探す。
「これはどうなんだろう……?あぁ、でもハート型は男の子は付けないよね」
私が探しているもの。それは、お揃いのキーホルダーだ。
同じものを二つ買って、それをアオくんに渡せば、周りのみんなは私とアオくんの関係に気づいてくれるだろう。
「あ、これいいかも!」
私はある一つの商品に目が止まり、すぐに購入ボタンを押した。
♢ ♢ ♢
「いつ渡そう…………」
あれから数日が経ち、私は届いたキーホルダーを学校に持ってきていた。
でも、渡すタイミングが見つからない。
朝の登校時に渡せばいいと思っていたけれど、よりにもよって今日はアオくんが寝坊して一緒に登校できなかった。今の昼休みの時間ではアオくんは友達と一緒にお昼ごはんを食べているから声を掛けづらい。
「となると、やっぱり下校時間に渡すしかないかな」
というわけで、私は終礼が終わった後すぐにアオくんのいる席に向かった。
「アオくん、一緒に帰ろう」
「おう」
そうして私は、アオくんの隣に並んで学校を出た。
「きょ、今日は一日中いい天気だったね」
「そうだなぁ。昼の時なんて雲一つなかったな」
「……………………」
「……………………」
ど、どうやって渡そう…………。
お土産とか普通のプレゼントなら簡単に渡せるのに、なんでお揃いのものはこんなにも渡しにくいの!?
特別な気持ちがない限り普通は渡さないから?でも、私たちはたぶんカップルなんだし、渡すのは不自然じゃないはず!あーでもなんか緊張する!!
「やっぱり、佳奈のそばにいるときが一番落ち着くなぁ。そりゃそうか、ずっと一緒にいるもんな」
私がキーホルダーのことでずっと悩んでいると、突然アオくんがそんなことを口にした。
「え?あぁ、そうだね。私もアオくんと一緒にいるときが一番落ち着く」
「なんの取り柄もなくて頼りない俺だけどさ、その……これからもよろしくな」
「あ、うん…………」
そうだ。私とアオくんはずっと一緒にいたんだ。
他の誰にも言えないような相談もアオくんになら打ち明けることもできていた。
それだけ、私とアオくんの関係は特別なんだ。
私は何を悩んでいたんだろう。
「アオくん」
「ん?」
私はかばんからキーホルダーを一つ取り出し、アオくんの前に差し出した。
「……何これ?」
「ま、間違って二つ買っちゃったから、アオくんにあげる…………私とお揃いだけど」
私が買ったのはイルカのキーホルダーだ。
アオくんは呆気にとられた様子をしながら、私からキーホルダーを受け取った。
「え、これ俺にくれるのか……? 」
「うん、いつも一緒にいてくれるお礼」
「マジか。超嬉しい!サンキュー、佳奈!」
アオくんは笑顔を浮かべながら、早速イルカのキーホルダーを自分の学生かばんに付けてくれた。
そういえば、アオくんにお揃いのものをあげたのはこれが初めてな気がする。
こんなにも喜んでもらえるなら、わざわざ買った甲斐があったかもしれない。
「これでお揃いのものを貰ったのは
………………え?
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