船出

あの、焼けるような夜に私たちは結ばれた。

「ねぇ、空子?起きてる?」

ガァァァ!!!!

「うん」

グゥウウウ!!!!

「起きてる」

ガアアアアアア!!!

「煩いね」

グウウウウウう!!!

「うん」

ガアアアアアっ!!

「私たち、」

グウウウウウ!!!

「親になるかもしれないのに・・・!」

ッ!!!

「・・・・」

「・・・静かになった」

私は、数度しか見た事の無い瑞樹の乳首をありったけの憎しみと愛をこめて軽くつねりました。

すると、ぴたりといびきが止まってしまったのでした。

「くククッあたしもあたしも!」

「あっ、まって」

空子は、ほとんどの場合加減を知らないものですからきっと起こしてしまう。

そう思いはしましたが、それを止めるだけの力はもう残されていませんでした。

向こう側の乳首が悲鳴を上げたように歪み血の気が失せる瞬間がスロォモォションのように見えました。私は、既に苦悶の表情を浮かべている瑞樹を起こしてしまったときにかける言葉を考えていました。


きゅうぅゥ。


「・・・・・!!」



ッパパリパリポリポリパリポリポリ・・・・!!


『!!!!!!』

しかし、瑞樹はその細腕からは想像もできない程の機械的な力を発揮して私たちを巻き込みました。思わず、私は目の前に差し出された桜色の乳首をぺろりと舐めて一瞬唇で触れ口に含み味わいました。

「うん・・・。トロ」

勿論、トロなど食べたことはありません。

「それ、ほんとにいやらしぃ」

「うん」

そのまま、放っておくと空子が真似して噛みつきそうな勢いだったので私はそのまま胸に耳を当て、壊れかけの心臓の音を改めました。

すると、空子も同じように。心臓の音を改めました。


 

 次の日、目眩がするほど眩しい朝に私たちは、瑞樹と思われる人を追って外に出た。

この世界には、太陽がちゃんとありました。

でも、とても広くて不安だ。


海岸に向かう途中瑞樹は、私たちの手を取って歩いてくれました。

瑞樹の左手の人差し指の第一関節には、包丁で何度も切ったせいで皮膚が固くなってる場所がある。このことを、風葉は知らない。


瑞樹の右手の人差し指の付け根には、何度も包丁が擦れて、すっかり固くなっている場所がありますが。このことを、空子は知りません。



波の音が聞こえないくらい。


空がどちらか解らないくらい。


命の鼓動が体中で響いてる。


そして、優しく手を振りほどいて海の方に少し歩いてお日様を体中で吸い込んだ。


瑞樹が振り返り。


わたしを見る!

この部分には、諸説ございます。

ザアアア!!

「ねぇ・・・。あの、ねぇ!」

ザアアアアアアア!!!!

恥ずかしそうに。

それは確かに。笑う瑞樹だった。

波の音も、空も何もかも見えなくなって聞こえなくなって。

聴覚が限界を超えて研ぎずまされてあの人の言葉を待ちました。


「2番目にだいすきだよ」

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