第7声 イエステール先生!セクハラです!

 龍馬は、ブレない。この世界に信用できるものは、限られているからだ。絶対に信用できるものは、自分と彩子のみ…


 他は利害関係等を考慮して、得られる情報を精査して分析することで、的確(いつ必要)なものなのか?正確(関連した情報がある)か?信頼(誰から?手段)は?等と考察し信頼度を決める。

 そして、得られたものから最善の目標を定め、龍馬は、目的を見失わないために呟いた。


 『彩子…』



 場面かわって、倒された騎士たちは、医療室に集まっていた。


 ダン「申し訳ありません。」

 騎士1「お前のせいではないぞダン。今の状況を教えてくれ。」


 病室のベッドの横にダンが立って報告し始めた。


 ダン「班の損害は、班長含め負傷者4名、1名については未だに意識が戻っていません…侵入者は1名のみであり、名前は横島龍馬といいます。現在は、地下の牢獄に入れられています。また、姫については、無事です。」


 騎士1「トルネについては、ダンが気にやむことはない。俺の指揮能力不足だ。それに、応急処置は的確だった。お前の功績は、班長の私から隊長に報告するからな。」


 ダン「了解です。」


 班長「あの侵入者、横島か、よく捕らえられたな。あの強さであれば、神術も強かろう?」


 ダン「いえ、あれは全く神素を持っていなく、神術は愚か、身体強化すらできないそうです。」


 班長「あの強さで、身体強化なしか…」

 ダン「他にあれば、確認してきますが?」


 班長「いや、いい。トルネの件は状況がかわりしだい教えてくれ。あと…」


 班長は、ダンに今後の指示を出した後、アゴ髭に手をやり、少し龍馬について考えた後、病室のふかふかのベットを堪能するように眠りについた。



 彩子は小部屋で目を覚ました。周囲に人影はない…


 「ヨウくん!」


 彩子は、声を出した。もちろん、返事はない。自分の体を確認する…


 「あった!」


 パンツに挟んでいた龍馬の左手を握りしめ、龍馬の温もりを感じる。

 安心した彩子は考え始めた。イエステールが言っていた「私が身籠っている」ということ。それから、龍馬のことを…


 「ヨウくん、大丈夫だよね?」


ぼそっと一人で呟いた。


 「いや、ヨウくんなら大丈夫!だって最強になった!って言ってたもんね。ね?…うん…いや、ダメダメ!ヨウくんが心配しちゃうから!こんなところまで迎えに来てくれたんだもん。もう心配かけないように、私が明るくしてなくちゃ!……ヨウくん…」


 彩子は、龍馬の左手を握り締めた。 


 コンコン…


 ドアを叩く音が響く。


 「は!はい!どうぞ!」


 彩子は声が裏返った。龍馬の左手を素早くパンツの中に隠す。

 少し、間をおいてからドアが開けられ、イエステールが部屋に入る。


「どうかされましたか?」


「いえ!」

 (自分でも顔が赤いのが分かるよー、独り言聞かれたゃったかな…)


 「お食事の準備ができました。参りましょう」


 「はい。あの…」


 彩子は、椅子から立ち上がりイエステールがいるドアまで近づく、イエステールはスムーズにエスコートしてくれている。


 「なんでしょうか?」


 歩きながら二人で話す。


 「あの…ヨウくん横島龍馬くんは、どこですか?」


 「彼は、生きていますよ」


 イエステールは、前を向いたまま答えた。


 彩子は戸惑った。

 (口調が強いな…どうしよう?質問に正確に答えてくれないし、聞いたらダメなことなのかな?話す内容を替えよう。でも、聞きたい…)


 「あっ…わ、私が身籠ったとかってお話の方は、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


 「そのような話し方をしなくても良いですよ。姫は姫の通りに、普段通りに振る舞ってください。あと、身籠ったというお話ですが、お食事のあとにお話ししますよ」


 「わかりました。じゃあ!イエステールさんは趣味とかってあるんですか?」…




 彩子とイエステールと他の神徒の4名での食事は彩子の独壇場となっていた。


 「~な訳ですよ!向こうの世界は!」(うーん、私、そんなにおしゃべりじゃないはずなんだけどな…)


 「どうぞ、おてんばですね。ついてますよ」


 イエステールは、自分の口元を指しながらどこからともなく出してきた おしぼりを差し出した。


 「あっすいません。ありがとうございます!」


 彩子は、口の回りと、ついでに顔も拭いておいた。


 「雰囲気が西洋なのに、おしぼりなんてあるんですね!あ!そうだ!私の妊娠?のお話!食べ終わりましたよ!」


 イエステールは、「フフフ」と笑いながら話始めた。


「では、姫が身籠っているというお話をしましょうか。」


 「お願いします。先生!」


 彩子は、おしぼりをおいて、両手を膝の上に置いた。

 イエステールは流暢に話し、神様のところでは感情が入っていた。


 彩子は、理解しようと勤めた。イエステールの言った内容は、この世界の子供の作り方、それに必要な神素という存在、神徒という存在と成り立ちについての前提の説明があった。そして、彩子が神から一番始めに生まれた神徒と同じ魂をもち、神素が集まりやすい体質のため、この世界に来た瞬間に身籠ったということらしい。

 なんたって、えっちか儀式で子供が作れるのだ。もう何でもありだ。しかも、私に無事に生んでもらいたいらしい…

 そして、不安が無くなるようにこうやって話せる範囲で説明してくれるようだ。


…というか、セクハラだよイエステール先生


 しかし、彩子は話を聞きながら同時に昔、龍馬が言ったことを思い出していた。


 昔の龍馬『詐欺師ってのはね、本当のことにほんの小さな嘘を混ぜて、自分で勉強しない人たちを自分の思い通りにしてくるやつのことをいうんだよ。そして、僕たちはそいつに勝てるように勉強しているんだよ。まあ、勉強のやり方を勉強してるって感じだね…だから、僕は…』


 彩子は、過去の龍馬の言葉を思い出しながら心の中で呟いた。

 (勉強する理由を聞いただけのに、勝負事しょうぶごとにしちゃうんだもん。しかも、予想外すぎだよ。だからの後って何て言ってたっけ?ヨウくん…)


 

 「ですが先生!私、身籠った感じしないんですけど…」


 「私たちには神素が姫に集まっているのが見えています。もうすでに相当な量が集まっていますので、これは妊娠の兆候に酷似しています」


 「そ…そうですか…あ、後どれくらいで生まれますか?あと、お父さんは誰になるのですか?」


 「神素の集まりしだいですが…あと、20日といったところでしょう」


 「20日はつか?!」


 イエステールは、続けた。


 「お父上は、いません。そして…」


 「いないの?!」


 彩子は、テーブルに乗り出して驚いた。


 「といったところですかね」


 「そして?なんですか?」


 「さあ、話は終わりです。片付ける方たちのことも考えて、部屋に戻りましょうか」


イエステールは、椅子から立ち上がった。


 「は!はい!」


 少し口調が変わったイエステールに彩子はなにも言えなかった。


 彩子は、大きなベッドだけの部屋で龍馬の左手をイジって遊びながらイエステールが言っていたことを反芻した。


 「何も嘘っぽいことは言ってなかったよね?」


 彩子は横向きに寝転がり、龍馬の左手の指と指の間に自分の細い指を入れてみる。


 「ヨウくんの手ごついよ~。恋人繋ぎ~。なーんてね。フフフ…」


 「まだ、男の子と手もまともに繋いだことないのに…グスッ…子供が出来るなんて…」


 彩子は、おもむろに龍馬の左手を太ももに挟んだ。


 「ここになにか挟むとなぜか落ち着くんだよね~ッテこれはヨウくんの手じゃん!私、なにやってんだろ…」


 …ガバッ


 彩子は布団にくるまった。


 「誰も…見てないよね……」


 龍馬の左手が上にスライドする。


 「ん…」


 「これはダメダメ!」

 彩子は思い止まった。(たぶん)




 龍馬は、左手の感触を確かめていた。

(左手が妙に生暖かい気がする)


「彩子が握ってくれているのかな…」


ぼそっと龍馬は、呟いた。


 彩子と龍馬は、別々の場所で触れあい、同じ時間を共有した。


 ※※※※次回予告※※※※

 神と彩子との関係や神徒については分かってきたが、未だに不明なことのほうが多い。神徒の目的は?彩子が子供を生むことにどういう意味を持つのか?龍馬と彩子の運命は?

 

 次回第8声「超が付くほどのバカ真面目」

 膀胱も~筆のあやまりは~おねしょタのこと~

 フィンディ心の賎流唄せんりゅうか

 論評:暴行と膀胱、筆(おろし)、綾ちゃんとマリちゃん、おねしょとショタ、多くの奇語や隠語が使われており、変態よろしい。

 …

 君は、自分に正直に生きているか…

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