第6声 神徒への謁見

 騎士が一人だけドアの前に立っている。

 龍馬から話しかけた。


 龍馬『どいてくれないかな?』


 騎士4「ここから先には行かせんぞ!」


 龍馬『彩子…姫には、危害は加えないからどいてくれない?』


 龍馬は、なにも気にしない様子で彩子を連れて歩いてドアまで向かう。


 騎士4「…苦ッ」カタカタカタ…

(震えが止まらない…足が動かない…)


 龍馬たちは、騎士4の横をそのまま通りすぎた。


 『どっちかな?』

 「騎士さん、ごめんね…右だよ。」


 彩子の声とともにドアが閉まった。


 騎士4「う…動けなかった。」

 崩れ落ちるように新米騎士は、座りこんだ。


 騎士3「よ…4番…応急処置を…してやってくれ…」

 騎士4「はい!…せ、先輩!」


 新米騎士は、倒された騎士たちに駆け寄るが、1人の鎧をすぐに外すと両手両足が通常曲がらない方向を向いていた。もう1人は、意識もない。

 新米騎士は、訓練の通りに応急処置として治癒力を上げる薬を射ち、外傷を確かめ、呼び掛けを行い、意識のない騎士の鎧を外して心肺の確認を行う。


 両手両足が折れていた騎士1が横から声をかける。

 騎士1「う…ダン、無事だったか…通信は?」


 新米騎士ダンは返事をし、耳当てに手をやる。


 「通信!こちら第1班!侵入者1名確認!現在地3-5-22《さんのごのふたふた》!負傷者3!うち1名意識なし、救護頼む!」


 ダンは応急処置を再開した。相手通信手は、状況確認を行ってくるが、応急処置を優先する。


 「心肺停止確認!トルネ先輩!起きて!」

「1.2.3.4トルネ先輩!起きて!…トルネ!30」


 ダンは、トルネの顎と額に手をあて気道を確保し、鼻を押さえた。「スー、ふーー」トルネの肺が膨らむ。


「スー、ふー」ダンは、また、心臓マッサージを始めた……




 龍馬と彩子は、そのまま誰にも会わずに大きい広間に出た。


 「昼間だったらあの椅子に偉い人がいるんだけど…」


 『そうか…でも、夜でも来てくれたみたいだね』


 「どこ?」


 彩子は龍馬が見据える方向を見た。


 「あの人が、たぶん偉い人だよ。名前は…」

 『俺は横島龍馬だ!おまえが、彩子をここへ連れてきたのか?』


 龍馬は彩子の言葉を遮り、前に踏み出しながら叫んだ。

 ボフン!天井のシャンデリアが急に光始め、相手の姿が鮮明になる。

 龍馬は、心のなかで呟いた。

 (彩子に少し似ている?)


 「私はイエステール、横島龍馬と言ったな。お前はどうやってこちらに来た?」


 彩子は、龍馬を見ている。


 「ヨウ!!!」


 彩子は、龍馬の後ろから抱きついていた。なぜ抱きついたのか、本人も分からなかったが、嫌な予感がして体が動いた。龍馬は彩子の優しい匂いに包まれ、背中に柔らかい感触を感じて動きを止めた。


 『…ありがとう…僕はもう、落ち着いたよ』


 彩子は手を離したが、龍馬の制服の裾を摘まんだ。

 龍馬は、少し膝を曲げて前屈みの姿勢になり話し始めた。(半もっこり)


 『神と名乗るやつに引き込まれて連れてこられた』(半分うそだ。あの声の存在は名乗ってない。そもそも、一人称すらを使わなかった)


 「神様?」


 彩子は小首をかしげた。


 「神だと?どういうことだ?いや、プランが変更されたのか?…」


 (完全に動揺している。つまり、イエステール自身が、龍馬が神に会う可能性を感じていると言うことだ。そして、たぶんだがイエステールは神に逆らえない…)と、龍馬は考えた。

 龍馬は、自分自身にとって一番重要な大切なことを理解している。だから、迷わず最善手を考え、すぐに行動に移せる。


 『お前の国との協定を申し込みたい』


 「…何を急に言っている?まさか…貴様とこの国と?協定?」


 龍馬は、胸を張りまっすぐイエステールを見据え、言い放った。

 『そうだ!』


 イエステールの横にもう一人現れた。龍馬は、もう一人を見る、こいつもどこか彩子に似ている気がした。


 『内容は、不戦協定だ!私は私個人の武力をお前たちに向けて使わない。お前たちはこちらの身柄を保証する!』


 「バカが、お前たちの世界とこちらの世界は違うのだ。神の身体からできた我々と土人形ついにんぎょうのお前とでは、寿命も力も何もかも対等ではないのだよ」


 龍馬は、感情を表に出したイエステールに心の中で安堵した。これで、確認したいことを聞き出しやすくなると…


 ガチャガチャ


 騎士たちがドアの前に集まりだした。


 『じゃあ…』

 「じゃあ、何で私なんかを連れてきたの?」


 龍馬が話す前に彩子が聞き始めた。

 龍馬は、彩子が連れてこられた理由をずっと考えていた。そして、ある最悪の可能性にたどり着いていた…


 まず、この世界の誰かが彩子に惚れて連れてきた可能性が思い付いていた。根拠は、余りないが、なぜかこの世界は彩子に似ている人が多い点や、アトラディ達の話からも一番しっくり来る。


 そもそも、自分が好きになった彩子だ!他の男いや、全ての生命が惚れてもおかしくはない。龍馬は、1人納得しかけていた。


 しかし、もし予想が正しければ10日も彩子が無事でいることや、アトラディたちが言っていた神様や生殖活動や性欲があるという話からもおかしい…そして、だれが彩子に惚れているのか?と言う疑問…現状から最悪の可能性を推察すると…


 イエステールたちは、不敵な笑みを浮かべた。

 龍馬は、彩子の顔を見た。


 『彩子?本当に何もされてないんだな?!』

 「え?何もされてないよ?」


 イエステールは、不敵に笑い始めた。


 「ふ、ははははは!何を焦っている!神素も使えぬ土人どじんよ!姫は、もうすでに身籠っておるぞ!私達の計画は完璧なのだ!はははは!」


 彩子には、龍馬が激怒していることがひしひしと伝わってくる。彩子は龍馬を止めるため、また抱きついた。


(ヨウくんが人殺しになっちゃう!!!!今こそ!今!言わなきゃ!ヨウくん!龍馬を止めるには気持ちを伝えるしかない!)


 そして、彩子は口を開けた。


 「やめて!私はヨウのことが、龍馬がす…ッ」


 彩子は最後まで言葉を言う前にその場に倒れ込みかけ…

 龍馬は、彩子をしっかりと支えた。


 『彩子!!!』


 彩子は薄れていく視界のなか、懐かしい声を聞いた気がした…


〈…かけら…どこ…〉


 彩子は、龍馬の腕のなかで気を失った。


 その後、龍馬はイエステールが彩子の首につけた爆弾神術※のこと、それをイエステールと他の二人の神徒がいつでも爆発させ彩子を殺せることを告げられ、龍馬は抵抗できずに牢獄に投獄された。



 ※※※※次回予告※※※※

 言いたくても言えないことがある。でも、言わなきゃ相手に伝わらない。遅すぎたと言うこともあるかもしれない…だけど、絶対に言わないといけない!…後悔してしまうことがないよう…生きるしかない!

 なーんてにゃ!

 常識だからとか、これをやったらとか、あれができたらとか、だがとか、ればとか、でもとか、言い訳だなと自分が思う言葉は、自分自身だけには言っちゃあいけない。自分に言い訳したら…もう、自分のことを少しも信用できなくなっちゃうよ!自分のことを自分より知ってるやつなんてこの世にいないのだから…一番自分のことを知ってるやつが自分のことを信用できないなんて、もう下を向いて生きるしかできなくなるかもめもめ揉め揉めおっぱい。おっぱい。ぷるんぷるん♪

 もっと明るくいこうぜ!シリアスクラァアアッシュ!

 次回第7声「イエステール先生、セクハラです!」

 君は下をムいたらおっきなおっぱいはあるか…


 ※神術(しんじゅつ):神素を利用した機構により、自然現象や超能力のようなことを発現できる理論体系やその効果を指す。

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