1話 眷属の儀

少女は、16歳になり村の掟に従い神々との眷属の誓いを行うことになった。

 眷属の誓いと言うのは、神に誓いをたてその日一番最初に目があった森の動物を狩り、供物として捧げるといったものだ。ちなみにこの村では、この神々との眷属の誓いが成人の誓いとなり、一人前として認められる。

 16歳になる者は、前日からもりに入り、仮拠点を作り夜を明かす。そして、夜が明けると共に狩りをはじめる。

 少女も掟のとおりに前日から、森に入りった。森は儀式の前日だからか静まり返っており、なんだか少し不気味なものに感じられた。

 「鳥一匹も見えないなんて、何だか怖いな。」

 少女は辺りを見回しながら囁いた。


 きょうは、辺りで狩りをし食料を捕ろうと思っていたが、兎一匹どころか鳥の一匹すらとれそうにない、仕方ないので少女は、持ってきた乾燥米とトマトを使い料理をつくることにした、持ってきた小さな鍋を取りだす。

さすがにまな板は持っていないので、ちかくに転がっていた平たい石をきれいに洗い、つかうことにした。

 狩りに使うナイフを取りだし、トマトを角切りにしていくナイフは、刃を研いだばかりだからとても切れ味が良く、潰れやすいトマトがいとも簡単に切れた。

 米は洗わずそのまま鍋に入れ、鍋に水とその辺に生えていた薬草を入れる。すべての材料を入れるとしばらく煮込む、薬草だけでは少し味気がないので、辺りおみまわしソルトツリーを探す。ソルトツリーとは、あたりの塩分を吸収する植物だ。塩分の少ない地域ではあまり見かけないと聞くが、この辺りではよく見かけるので、塩分が多く含まれているのだろう。

ちなみに旅と達の塩分補給や、料理の調味料として重宝されている。葉っぱが半透明で日の光を浴びると、まるで協会のステンドグラスのようにうつくしい、美しい葉をもぐのは申し訳ないが、美味しい料理のためには仕方ない、はを一枚貰い半分だけなべにくわえる。

 「じゃじゃん~トマトの簡単お雑煮。」

 暖かそうな湯気が登り美味しそうだ。しかし、今回他に食べる人はいないので一人寂しく食べることになった。

 皿は持っていないので、鍋から直接食べることにした。匙ですくい口にいれる。少し熱く舌を火傷しそうになるが美味しい。少女は夢中でご飯を頬張ばった。

 ここに鶏肉のひとつでもはいっていたならさらに美味しかっただろうがそれは、望みすぎだろう。

 スープは二人分作ってあったが、美味しかったので箸が進み一人で作ったスープのすべてを食べてしまった。二人分のスープを食べお腹が一杯になった少女は、明日に備え眠ることにした。



眠りについたあと少女は夢を見た。小さなころから繰り返し見る夢で、少女はいつも寝転がって上を見上げている。そうして優しい歌が、聞こえてくるのだ。

聞きなれない言葉で紡がれる歌だが、何度も聞いた少女はその歌を歌うことができるようになっていた。いつも歌が終わるころこの夢が終わるが、今日は過ごし違っていた。

歌が終わったころ暖かそうな手に撫でられたと思ったら、その歌を歌っていた人物の姿を見た。

優しそうなその人物は緑色の目を細め少女を見ていた…。あなたはお母さんなの…?


 

 朝になり少女は目を覚ました。これから本格的に儀式が始まる。今から目があった生物を村に持ち帰らなければいけない、辺りは静まり返っている。

 「昨日もそうだったけどどうしてだろう…。朝なのに鳥の鳴き声さえも聞こえない。」

 不思議に思ったが考えていても何も始まらないので、少女は歩きだした。

 ずいぶんと歩き足が疲れてきた。村人達から聞いていた話によると、心引かれる方に進めば良いと聞いていたが、少女にはそれが分からなかった。とりあえず何も考えずに森の奥へと進んでいた。

 途中に川があったので、喉の乾きを癒すために水をのんだ。疲れていたこともありただの水にも関わらず。とても美味しく、なんだか疲れが取れたようだった。


 それにしても、本当に今日はどうしたのだろうか、いつもならばどんなに少なくとも、魚が一匹は泳いでいるのだが、本当に一匹もおよいでいない。

このまま狩りができなければどうなるのだろうか、少女が聞いているかぎりよほど体が弱い人意外は、この儀式で獲物を捕まえて来ている。

もしかしたら私が一番最初の例になるかも知れない、と思うとやる気が下がってしまう。それとも獲物を捕るまで家に帰らない方がいいのだろうか、頭の中でもんもんと考えていてもなにも解決しない、少女は気合いを入れるために力いっぱい自分の頬を叩いた。じんじんとした痛みとともに頭がシャンとした。

頭がシャンとしたから

なのだろうか、もりの大樹の方から何かを感じた。いやな気配ではなく、どこか懐かしい気配だった。

少女は急かされる様に大樹の方へと向かった。

 大樹の周辺へ近付くにつれて、辺りに薄い霧が立ち込める様になり、少し肌寒くなってきた。大樹の下へついた時小さな物音が聞こえ少女は、そちらを見たすると大きないのししが背中を向けて、立っていた。

やっと狩るべき獲物を見つけて少女は嬉しくなった。儀式では目を会わせなければ、狩りをしてはいけないので持っていた弓矢を構え、イノシシの注意を引くためわざと外して打った。

しかしイノシシはこちらを向くことなく逃げてしまった。

遠くまで逃げていないなら追いかけようかとそちらを向くと、今まで枯れ葉の束だと思い、気にしていなかったものが微かに動き小さなうめき声を上げた。


それに驚きよくよく見て見れば、それは、うつ伏せに倒れた若い男性だった。少女は急いで、その青年に駆け寄った。

「大丈夫ですか!!」

声をかけるが反応はなく、微かにうめき声をあげるのみで、どうやらひどい怪我をおっている様だった。

取り敢えずひどい怪我だけでも応急処置をしようと、男の近くへと駆け寄った。

 その瞬間、少女は何かに力強く引っ張られ他と思うと勢いよく地面へと押し倒された。押し倒された衝撃で頭をうち痛みで、涙が出て目をつぶった。

「何者だ、私に何をするつもりだ、言え。」

先ほどまで息も絶え絶えだったのが嘘の様に、怒鳴りつけてきた。

 助けようとしたのに怒鳴られたことで、少女は怒り我わすれて、目を開けた。すると自分のすぐ上にいる青年と目があってしまった。やってしまったと思い目をつむるがもう遅い、すでに目はあったあとだ。どうやら私は、この青年を狩りしなければならないらしい。

 「どうしてこうなった。」

少女の間抜けな表情をみて、敵意がないことが伝わったのか、すでに限界なのに力を振り絞り行動したからなのか、青年は倒れてしまった。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る