ストレス自動製造機

 私は激怒した。かの支離滅裂な検索結果を、必ずや打ち倒してやろうと心に誓った。


 ……さて、何を怒っているのかというと、「虫 逃がす」みたいなワードでウェブ検索したのに虫をいじめるような話題が表示されたことだ。検索エンジンには逃がすといじめるの違いが分からないのだろうか。


 いや、逃がすという言葉が文中のどこかに含まれていたからヒットしたのだろうが……。私も一々検索結果に反応するなんて、なぜこんなに心が狭いのだろう。



 でも本当に苦手で苦手でしょうがないなら駆除するのも仕方ないけれど、いじめることができるなら普通に逃がしてあげることもできるはずだ。駆除の必要があるというなら普通の方法で駆除すればいい。必要以上に忌み嫌ったり、気に入らないものに苦痛を与えようとする人間の本性が恐ろしい。


 そして地球の人々も、人間がただ歩いているだけで殺されたら「人種差別だ!」と怒るだろうに(長い年月を経てやっとそこまで到達したのかもしれないけれど)、ただ歩いているだけの虫やヘビが異常に嫌われていても反応しないのは何故だろう。生物種差別ではないか。


 まぁ自分もハチを見たら一歩も二歩も三歩も下がるのでハチ差別しているが……。


 人間は理屈より集団心理で動くところもあるのだろう。



 この間ムクドリが一羽現れたので観察しに行ったら、こちらの気配に気づいて逃げてしまった。しかしその後ムクドリの集団が現れたときは、私が写真を何枚撮ってもムクドリたちは気にも止めなかった。そしてその翌日、ムクドリが2~3羽いたので近づいたところ逃げていった。


 大勢いることで安心するのは群れる動物の心理なのかもしれない。ヒヨドリは1~2羽でも堂々と目立つところに止まっていてすごいけれど。


 そんなわけだから民衆も、差別する風潮であれば差別をし、それが悪とされる風向きに変わると途端に意見を変えるのだろう。誰かに左右されることなく確たる意志を持っている人間なんてきっと一握りだ。



 人生万事塞翁が馬……風向きは良くも悪くも変わる。

「時代が追いつく」なんて言葉もあるが、時代に追いつかれたところで追い抜かれたところで大して気にしない方がいい。民意などどうとでも変わるのだ。


 今は虫はやや嫌われ者のようだが、数十年後には虫保護ブームがくるかもしれない。そして一旦大切にされたものがまた大切にされなくなるときがくるかもしれない。コロコロ変わる人の意見や風潮など、気にしてもしょうがないのだ。


 ……と、そう主張するなら検索結果に腹を立てているのはおかしい。

 結局のところ私はストレス自動製造機であって、理由を付けては怒りたいだけだったのだ。





 ちなみに私は、ペットボトルの上部分を切り取ってコップ型の容器にしたものと、厚紙を使って虫を逃がしています。コップ型容器を虫にかぶせて下から厚紙ですくうと、大抵の虫は捕まえられます。


 虫によっては捕まえられそうになると飛んだり走ったりくぐり抜けたりして逃げようとすることがあるので、様子を見ながらゆっくり捕まえた方がいいかもしれません。あんまり勢いよくやると、容器のフチで切断してしまうかも。


 ムカデの場合は進行方向に容器を置いて入るのを待ちます。ムカデは足が多いのでなかなか容器の底に行かず、容器のフチに足を引っかけてくっつくこともあるので、容器を持ち上げるときには噛まれないように注意が必要です。


 ハチはペットボトルで捕まえたことがありません。捕まえたら刺されそうなので、部屋に入ってきたら電気を消して窓を開けます。





関連エッセイ「虫好きな人がおかしい? 虫嫌いな世の中がおかしい?」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896019060/episodes/1177354054896062814

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