第1話 後編
彼女を買った後、私たちはテロリストの拠点を去り、徒歩で共和国軍の拠点へ帰っている。
いつの間にか雪は止んでいた。
(あぁ、やってしまった。完全にやらかした。なんで、状況が状況だったとは言え、敵国の兵士である彼女について行って行ってしまった。これ帝国に対する反逆だよ……でも、よく考えると今まで帝国に居て良いことがあっただろうか?)
あぁ、やらかした。その場のノリに近しい何かで帝国の兵士を助けて、今共和国軍の基地に入れようとしてる……これはまた司令官に何か言われるよ……
(親には捨てられて……孤児院では虐められ、挙げ句の果てには入りたくもない軍に入れられた。しまいには捕まっても救出が来ない……私を助けてくれた彼女の方がよっぽど優しい)
うーーーん、なんて司令官に言おうかな?
そうだ!観測手だ。
でも確か、観測手って狙撃手より経験が豊富な人がやるって訓練兵時代に教わったような……
(……私は彼女にかけてみようと思う)
まあ、いっか。なんとかしよう。
あの目をしてた人は大抵強くなる。
……多分。
(まずは会話、ですよね)
「あ、あの……先程はありがとうございました」
「いえいえ……ところで何故捕まったの?」
流石に帝国軍が民兵如きに負ける訳は無い。
「えっと……私は大した訓練もして無いので」
なるほど、3年も戦い続けた帝国の実情か。
「可哀想に……」
「私は良い方です。ある人なんか銃すら持たせてくれなかったそうです。代わりに渡されたのがツルハシだそうです」
それは流石に……。
共和国はそこまで酷くはない。
どんなに酷くても一世代前のライフルを渡されるくらいだ。
「それはまぁ……酷いね」
「愚痴はともかくとして……そう言えばあなた様の名前は?聞いていなかったので」
あぁ、そう言えば名乗って無かったっけ。
「えっと……アイリスって言うんだけど……こっちの方が多分有名だろうね。コードネームはベオウルフって言うんだけど……」
「ベオウルフってあれですか?あの帝国陸軍の戦力の1/2奪ったヤバイスナイパーとか奴に見つかるとコンマ0.1秒でミンチにされるとか、20ミリ砲を愛用してるバ火力信者とか言われてる共和国の狙撃手の……ですか?」
「えっっっと、多分その狙撃手だと……思う」
なんだその噂は。あと、この子は対物ライフルだって言うの
「えぇぇぇぇ!」
(私の購入者は、私の想像の1000倍くらい大物でした)
「はぁ、まさか……あなたがベオウルフさんだったとは」
「ふふっ、意外だった?」
「えぇ、まさかあんなに面倒くさがり屋だとは思いませんでした」
私たちはベッドに座り掛けながら話しをする。
私たちはあの後、共和国軍の基地に到着し、司令官に報酬金を渡し、彼女のことを話した。
意外にも対して何も言われなかった。
理由を聞くとなんでも
「お前はあの狂信者を従えたんだから帝国兵くらい好きにしろ」
だ、そうだ。
あの子いい子じゃない。
早く、帝国軍の子、エリと言うらしいが彼女にも紹介したいものだ。
あの子、よくどこか行ってるけど何してるんだろうか?
「ひ、ひぃぃぃ。や、やめろ!お前、狂ってるぞ!」
「我らの神を暗殺しようとは良い度胸ですね〜♪
まぁぁぁ、私がこんなことしなくても我らの神なら大丈夫だろうけど一応、ね」
「や、やめ」
「面倒くさがり屋とは失礼な。エリ殿、これより罰を与える」
「へ?ちょっ、ベオウルフさん?耳を舐めないでぇぇぇ」
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