合コン?当日(一華の場合)〈3〉

 渉くんたちはカラオケを出ると、別の店へ夕飯を取るようだった。

 それから女性陣が一足早く帰り、幹児君も帰っていく。

 ただ渉くんだけは駅とは正反対の方、繁華街へ戻っていく様子。


(どうして?)


 向かった先は、さっきまで私がいたカラオケ店前のコーヒーショップ。

 私も追いかけて、店内へ。

 コーヒーを注文して、二階に上がる。

 すると、窓際の席に渉くんがいた。

 ぼーっとして、窓から外を見ている。

 何かあったのだろうか。

 その表情は少なくとも、一日遊んで楽しかった、という雰囲気ではなかった。


「渉くん」


 そう呼びかけると、渉くんは面白いくらいびっくりしてくれる。

 これだから、からかったりしたくなってしまうのだ。


「先輩!? どうして……」


 私はこれまでのことを伝える。

 引かれるかもと思ったけれど、そんなことはなかった。

 渉くんはにこりと笑ったのだ。


「何、嬉しそうな顔、してるの?」

「先輩が心配してくれて嬉しいんです」

「心配って……言っておくけど、渉くんのことを信用してないって訳じゃないのよ」

「分かってます」

「ならいいわ。じゃあ次は、渉くんの番よ」

「ぼくの、ですか?」

「何があって、まだここにいる訳?」

「……実は」


 渉くんは話してくれる。


「やたらと馴れ馴れしいって思ったけど、そういうことね。

教えてくれなかったからって無視するとか、子どもっぽいんだから」

「話さなくて良かったですよね?」

「もちろんよ。

――じゃ、二人で帰ろっか」

「待って下さい!」

「ん?」

「あの……その……これから、近くをブラブラしませんかっ?」


 突然の申し出に、私はきっと間の抜けた顔をしていたはず。

 渉くんらしからぬ積極さが嬉しかった。


「そうね。行きましょ。

双葉にもデートって言って出て来たし」


 そうして私たちは夜の繁華街に出て行った。

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