合コン?当日(一華の場合)〈2〉
駅に着くと、人混みを押しのけるように早足で広場へ。
当然、渉くんたちの姿はない。
(お昼はこの辺りで食べてから、遊びに行くだろうから……)
ファミレスへ足を伸ばす。
ここなら繁華街にも近いし。
店に入り、店員さんにカウンター席に案内して貰う。
注文をすると、人でごった返す店内をそれとなく伺いながら、お手洗いへ行くフリをして、店内をチェックする。
(いた!)
ボックス席だ。
(結構、盛り上がってるみたい)
ちらっと見ると、ショートの子もポニーテールの子も可愛い。
トイレに入り、何も出せずに出る。
(渉くん、結構押されてるかも)
ショートの子が積極的に渉に質問している。
渉は答えつつ、ポニーテールの子にも話を振っていた。
(うんうん。
ちゃんとコミュニケーションが取れてるみたいで感心ね)
そうして席に戻った。
※
私が食事を終えてしばらくして、渉くんたちがファミレスを出ていく。
並びは、綺麗に男性陣と女性陣と別れている。
それを見て、少しほっとしている自分に驚いてしまう。
(やっぱり私は渉くんのことが好きなんだ)
そんな当たり前なことを思う。
渉くんの背中を見ながら、私もお会計をして、四人の後を追いかける。
(今の私、本当にヤバイ人ね……)
休日でカップルや友達同士で賑わう中、一人で歩いている自分をショーウィンドウで見てつくづく思う。
(これじゃまるで渉くんを信用してないみたい)
と思いながら、今日一日渉くんが帰ってくるまで家にいたら、ずっと悶々するだろうことも分かりきっている。
これは単なる私の我がままだ。
気になってしまうのだから、しょうがない。
と、歩き出そうとしたが、渉くんがこちらを見ていた。
「っ!」
本当に驚くと人間声が出ないらしく、私は反射的に慌てて路地へ飛び込んでいた。
胸を押さえると、馬鹿みたいに鼓動が高鳴っている。
(ばれたり、してないよね?)
もし尾行がバレてしまったら、恥ずかし過ぎる。
(っていうか、気持ち悪いって思われちゃうかも!)
こっそりと角から通りを窺うが、渉くんの姿は人混みに消えてしまって見えない。
ここで尾行を切り上げるかどうか迷ったけれど、ここまで来たら最後まで行くしかない。
仮に見つかってしまったら、たまたま買い物に来た――と強引に切り抜けよう。
そう心に決め、人混みを掻き分ける。
しかし路地に飛び込んだのが不味かったのか、渉くんたちの姿は見えなかった。
(ゲームセンター、カラオケ……。
さすがに買い物って雰囲気ではないかな。
相手の子たちとは初めて会うわけだし……)
手近にあったカラオケへ入ると、キョロキョロと辺りを見回しながら、渉くんたちを探す。
(ここにはいないのかな……)
この混雑具合だ。
渉くんを探すのはかなり骨が折れるかも――そう思いかけて、角から廊下を見た。
トイレ前にいる渉くんを見つけた。
見つけたはいいが、ここで何をすればいいのかと考えて、ケータイを手にしてメッセージを送る
――うまくやってるー?
すぐに渉くんがはっとしてケータイを見る。
少し口元が緩んでいる。
それだけで、嬉しかった。
さらにメッセージを送ろうとしたその時。
渉くんと一緒に来ていたショートカットの女の子が、渉くんの腕を馴れ馴れしく掴んだのだ。
「っ!」
思わず足を一歩踏み込んでから、はっとした。
こんなところで出ていったら、渉くんをパニックにさせるだけだし、面倒事に巻き込んでしまう――そう直感的に思った。
そそくさとカラオケ店を出ると、向かいにあったコーヒーショップに入って、渉くんが出てくるまで時間を潰すことにした。
二階席の窓際の席に陣取りつつ、カラオケ店を見張る。
(うーん……。私、何してるんだろ……)
一人で大騒ぎしているようだったが、しょうがない。
というか、さっきの子は人の恋人に馴れ馴れしく何をしているのか。
いや、そもそも恋人がいることは内緒にしているのだけれど。
もどかしすぎる……。
(まさか誘惑? 渉くんがそんな馬鹿なことでコロッといくわけはないにせよ……。
要注意ねっ)
さっきの子の顔を、しっかり頭に刻み込んだ。
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