第9話 合コン?当日(一華の場合)
「ハンカチは持った?」
「持ちました。子ども扱いしないで下さいよ……」
そう、渉くんは困った顔で笑う。
もちろん、そういう反応を期待してのこと。
「ティッシュは?」
「オッケーです」
「よしよし」
玄関まで送る。
今日、渉くんは夏目くんに誘われて、合コン、改め、女の子と遊ぶ予定、らしい。
「楽しんで」
「いってきますっ」
「いってらっしゃい」
そうして、渉くんの背中を見送り、部屋に戻ろうとする。
と、双葉がいた。
「渉さん、出かけたの?」
「うん、今ね」
双葉も誤解がとけたせいか、渉くんへの敵意はすっかり消えたらしい。
私のことを心配してくれるのは嬉しいが、我が妹ながら、あんな一面があるとはびっくりだ。
お父さんが知ったら、泣くかも。
「何がおかしいの?」
「ううん。何でも無い」
そうして部屋に戻る。
特に予定もないし、勉強でもしようか。
来年はいよいよ受験と言っても、なかなか実感が湧かない。
(生徒会長として、今年の文化祭、体育祭の計画をしているからかなぁ)
まだ受験をするか、それとも推薦を目指すかも決めていない。
ケータイを見る。
渉くんとのメッセージのやりとりを自然と、確認していた。
(今頃、渉くんは女の子と嬉しそうに話してるのかな)
渉くんがそんなことをするはずないと分かっていながら、気になってしまう。
――楽しんでる?
文字を打ちかけ、削除した。
(これが付き合うってことなのかな)
いつも相手のことが気になってしまう。
寝ても覚めてもと言うのは大げさにしても気づけば、相手のことを考えている。
(……よし)
出かける用意をして部屋を出る。
と、双葉がびっくりした顔で立っていた。
「双葉? どうしたの?」
「うん。ね、遊びに行こっ」
「ごめんね。今からちょっと……」
「出かけるの?」
散歩なんて言ったら、「一緒に行く」と言うかも。
(こんなストーカーみたいなこと、さすがに双葉と一緒って訳にはいかないよね)
「ごめん。これからデートなの」
「え! で、デートって、この間言ってた?」
「そう。ごめんね。来週、渉くんと一緒に遊ぼうっ」
そう早口で言って、私は家を出た。
(強引だったかな。
……今度、ケーキで許して貰おう)
そう自分を納得させて、昨日服を買いに行った街に向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます