合コン?当日〈5〉

 カラオケを終えると、近くのファミレスで夕飯を取った。

 食事を終えると、明日も部活の朝練があるらしく倉山さんたちは帰っていった。

 幹児はもう少し遊ぼうと誘われたが、ぼくは適当な理由で切り上げ、近くのコーヒーショップに寄った。

 ここで気持ちを落ち着かせたかったのだ。


(あんな露骨に無視されるんだー……)


 倉山さんとのことをぼんやり考えながら、コーヒーを飲んでいると、人の気配を感じた。

 顔を上げると、


「先輩!?」

「ここ、いい?」

「え、あ……」

「座っちゃうね」


 戸惑うぼくを尻目に、先輩が向かいに座った。


「どう。今日は楽しんだ?」

「自然に話し出すんですか!?」

「ん?

そうだけど?」

「どうしてここに先輩がいるんですか!?

それも、こ、ここに……」

「監視アプリ入れたんだよねー」

「え!?」

「冗談だって」

「せんぱーい……」

「そんなに私が信用できない?」

「そういう訳じゃないですけど。

それじゃ本当に偶然なんですか?」

「分かった。

……こっそり付いてきたの」

「え!」

「だって、女の子も一緒だし、私としてはちょーっとばっかり心配だったの」

「でも先輩、何も言わなかったじゃないですか」

「あの時は何とも思わなかったけど、恋人が他の子といるんだって思ったら、気になっちゃって、居ても立ってもいられなくなったの」

「そ、そうなんですね」

「だからほら……渉くんが別の子と、カラオケで話しているのを見て、私、あの場に行こうって思っちゃったの。

ねえ、あの子、馴れ馴れしくない?

渉くんの腕を掴んで……渉くんの方も悪くはなさそうだったし」

「それは誤解です!

あれは幹児に彼女がいるかって聞かれただけなんです」

「どうしてあなたに聞くの?」

「実はあの子、幹児と中学時代、付き合ってたみたいで。

それで今も付き合ってる子はいるのかって聞かれたんです」

「答えたの?」

「幹児に聞いてくれって言いました」

「それが正解だと思うわ」

「ありがとうございます。

それにしても、先輩、よく一人で外に出られましたね。

双葉ちゃん、付いていくって言いませんでした?」

「それなんだけど、早速使っちゃった」

「何をですか?」

「デートって言ったの」

「な、なるほど……」

「――じゃ、そろそろ帰ろっか」

「あ、待って下さい!」

「ん?」

「折角、二人っきりなんですから……。

あの、最近はなかなか二人っきりになれてませんでしたから……」

「そうね。

デートに行くって、双葉にも言ってるし」


 ぼくらはいそいそと店を出た。

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