第8話 合コン?当日〈1〉

「先輩。いいですか?」


 部屋の扉をノックをすると、すぐに先輩が顔を出した。


「おはよ」

「おはようございます」

「合コンの自慢かな?」

「ち、違いますっ!」

「それじゃどうしたの?

約束は十二時でしょ。行かなくていいの?」

「まだ一時間くらいありますから」

「服をどうするかってこと?」

「昨日の、あの……恋人のことです。

あれで良かったのかって、やっぱり迷っちゃって」

「渉くんが不安がることはないでしょ?

付き合ってるのは私なんだし」

「先輩だけに負担をするのはと思って。

ぼくも何かしら絡めれば……」


 先輩は笑う。


「もう。それじゃ意味がないでしょ?

折角、双葉と和解できたのに。

私は今みたいな関係でいてくれる方が嬉しいわ

「そうですけど……。

先輩に負担をかけてしまっているので」

「心配無用。

私は楽しんでるんだから」

「そ、そうなんですか」

「というか、人の心配してる場合?」

「え?」

「私は、渉くんがちゃんと女の子たちと接することができるかの方が、心配なんだけど?」

「幹児もいますから大丈夫ですよ」

「駄目。渉くんもちゃんと相手を楽しませて。

別に気に入られる必要はないけど、気を遣われないようにね」

「あ、はい」

「もう……」

「どうしました?」

「心配でしょうがないの。

ついていってあげようか?」

「先輩が!?」

「保護者として」

「ええ!」

「ふふ。冗談」

「あ、そ、そうですよね……」

「なーに? 本当についていって欲しかったんだぁ」


 先輩はくすくすと微笑む。


「……私はついていけないけど、浮気はダメだよ?」


 耳元で囁かれ、ぼくは顔が熱くなるのを自覚した。


「もちろんですっ!」

「よろしい」


 廊下に出て、自分の部屋に戻ろうというところで、双葉ちゃんが部屋から出てきた。


「おはよう、双葉ちゃん」

「……お、おはよう、ございます」


 双葉ちゃんは、視線をさまよわせながら呟いた。

 でもこうして普通に挨拶できる仲になれただけでも、十分すぎる。


「今日、出かけるんですよね?」

「うん」

「そうですか」


 双葉ちゃんはすたすたと、階段を下りていった。


(関係改善できたって思っていいんだよね)

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