土曜日のおでかけ〈4〉

 そうして、ぼくらは繁華街にあるファミレスに行った。

 ボックス席に案内され、そこで双葉ちゃんと向き合う格好で、先輩とぼくが並んで座る。


「何を頼みましょうか?」


 ぼくは出来る限り、笑顔で言う。

 実はここに来るまで、ずっと先輩と双葉ちゃんは話していなかった。


「お姉ちゃん、誰と付き合ってるの?」


 ぼくの話は無視して、双葉ちゃんが口火を切った。


「いきなりね」

「ねえ、本当なの?

……この人が言ったんだけど。

誰と付き合ってるの?

どうして、私に秘密にしてたのっ?」

「こうして騒ぐから」

「騒ぐよ! 決まってるじゃん!」

「まだ付き合いたてだし、ね」

「学校の人?」

「うん」

「誰?」

「内緒」

「どうしてっ」

「時期が来たら、教えるから」

「……お父さんにも?」

「そ。

だけど秘密にしててよ?

怒りまくって、問い詰められるの面倒だから」

「……うん。だね」

「他に質問は?」

「もし変な事されたら、すぐに言ってね!」


 先輩はちらっと、ぼくを見る。


「分かったわ」


 ぼくは「あははは……」笑うしかない。


「それじゃ双葉。

これまで渉くんにひどいこと言ったでしょ。

何を言うかは、分かるよね?」

「…………」

「双葉」

「……ごめんなさい。

あの、これまでっていうか、さっきもですけど、言い過ぎました」

「ぼくは気にしてないよ。

これから仕切り直しが出来ればって思うよ」

「あ、はい


「さあ、注文しましょっ」


 先輩の言葉で、その話は終わりになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る