デート準備!?〈2〉

 翌朝の食卓の場。

 こうして家族五人で賑やかに話ながら食事を取るのが、とても楽しかった。


「どうだろう。

土曜日に買い物に行かないか?

映画とかも見に行って……」


 そう、陽介さんが言うと、


「私、駄目」


 先輩が即答した。

 

 昨日のことがあるから、どうしたって先輩のちょっとした発言を気にしてしまう。


「友達と約束があるのか?」

「そう。デート」

「どこの男だ!?」


 陽介さんは目を剥いて、立ち上がった。

 

 ぼくは思わず、びくっとしてしまう。

 

「お父さん。

渉くんがいるんだよ」

「あ、す、すまない……。

いや、娘のデートだなんて……」


 馴れているのか先輩は笑みを浮かべたまま、ぼくを指さす。


「そうだよ。

渉くんと、ね」

「んん?」

「渉くんの服を買いに行くの。

日曜日に合コンなんだって」

「先輩!?」


 あまりに唐突な発言に、声が上擦ってしまう。


 陽介さんが笑顔になる。


「おお! そうかそうか!

若い健全な男子だからなぁ。

応援しているぞ、渉君!

いいか? 押しの一手だからな!

好きだと言われて、悪く思わない女性はいないからな!」


 母さんが笑う。


「陽介さんったら。

今の若い子たちには、若い子たちなりのやり方があるんだから。

そんな強引に迫ったらすぐにブロックされちゃうわ」

「そうか……。

それもそうだな。

一華、バッチリコーディネートをしてやれ。

それから、女性の攻略法も」


 先輩が呆れたように笑う。

 

「お父さん、ゲームじゃないんだから」

「――陽介さん、違うんです。

合コンじゃなくって、友達に来て欲しいって頼まれたから行くだけです」


 ぼくはやんわりと言った。


「それじゃあ渉君は彼女はまだ?」

「え、あ、それは……」

「いるわけないじゃない」

「母さん!」

「あら、いるの?」

「いない、けど……」

「まあまあ。

彼女を作るにしても作らないにしても、楽しめればそれでいいさ。

とにかく渉君、応援してるぞっ!」

「あはは……。

あ、ありがとうございます」


「ふふ、頑張ろうね。

渉くん」

 先輩は笑顔だった。

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