第6話 デート準備!?(一華の場合)
私は部屋で、思い出し笑いをしていた。
(渉くんってば、デートって言った時の顔、すごく面白かった)
いよいよ明日、二人で出かける。
(こういうこと、初めてだから緊張しちゃうな)
ケータイでデート特集なんかを調べるのも、検索しているだけで楽しい。
彼氏や彼女のいる同級生たちが嬉しそうにデートの話をしていたことを思い出す。
今の自分と同じだったのだと考えれば、ウキウキするのも分かる。
(服も考えないと……)
服をあれこれと見る。
(スカートにしようかな……。
でもスカートだと制服と同じ格好だって思われちゃうかも。
動きやすく、ジーンズ?)
その時、扉が開く。
「双葉、どうかした?」
私は目の端で妹を見ながら、服選びを続ける。
そんな妹は、むっつりと不機嫌そうだった。
「ねえ、さっきの出かける話って本当?」
「そうよ」
「正気?」
私は理由を察して、苦笑いしてしまう。
「反対?」
「あいつ、絶対下心あるから。
お姉ちゃんもノリノリで、デートとか言っちゃって、無防備すぎ!」
「それは言葉の綾なんだって」
「だいたい、お姉ちゃんがどうして服とか選ばなきゃいけないのっ?
あんなやつの服なんて勝手に選ばせればいいのよ」
「双葉が買い物行く時だって、ついていくでしょ?」
「私はいいの!
妹なんだから!
相手は男なんだよ!?」
(本当に双葉ってば、男嫌いなんだから)
昔は幼馴染の子男の子と、仲良く遊んでたはずなのに。
「お姉ちゃん、私も行くから」
その言葉には、さすがにはっとしてしまう。
「どうして?」
「決まってるじゃん! お姉ちゃんを守る為!」
「守る為って。大袈裟よ。
だって渉くんだよ。
あんなに綺麗な絵を描く人なんだよ?
考えすぎだって」
「絵とか関係無いし。。
お姉ちゃんがそうして優しくすると、あいつ、絶対勘違いするから!」
「あいつ、なんて言わないの」
「勘違いするっていう方に、反応して!
……とにかく、私も行くからっ。
いいよね!」
「分かったわ」
仕方なかった。
ここで拒否したら、怪しまれてしまう。
「お姉ちゃんもちゃんと自分のことを大切にしてよね
いつでも私が一緒にいてあげられる訳じゃないんだから」
「一緒に行くなら条件があるわ」
「何?
条件って……」
「ちゃんと渉くんと話すこと。
むすっとして無視とかは絶対にしないこと」
「なんで!」
「渉くんは何も悪いことはしてないのに
双葉との関係が悪いことを、悩んでるの」
「私はお姉ちゃんを心配して……」
「私を心配してくれてありがとう。
でも態度は改めて。いい?」
「…………」
「双葉。分かった?」
私が普段と違って強い口調で言うと、双葉は少し目を伏せる格好で頷いた。
とても渋々だったけれど。
「よし」
「……じゃあ、土曜日に」
「うん」
双葉は不満げな顔をしながら、部屋を出ていく。
(まあしょうがないか)
私は家を出ると、渉くんの部屋を尋ねた。
ノックをすると、すぐに渉くんが出てくれた。
部屋に入る。
「突然ごめんね」
「大丈夫です。どうしたんですか?」
「明日のことだけど」
双葉のことをかいつまんで話すと、渉くんは笑顔のまま頷く。
「分かりました」
「ごめんね。折角……」
「いいんですよ。
あの、でも……」
「ん?」
「次はちゃんと、デートに行きましょうっ」
勢い込んで言う渉くんが、とても微笑ましい。
「ふふ。そうね」
胸が温かくなるのを感じて、自然と笑顔になれた。
「そろそろ、もっと双葉ちゃんと仲良くなりたいですね」
「そうね。
明日は双葉と仲良くなれるよう応援するわ」
「先輩にそう言ってもらえると、すごく心強いです」
「私も双葉には、渉くんのことを少しくらいは好きになって欲しいもの」
「あー、そんな嫌われちゃってますか?」
「まあ、あの子は男の子が嫌いみたいね。
昔はそうじゃなかったんだけど」
「そうなんですね」
「そんな顔しないで。
明日一日一緒に過ごせば大丈夫」
私は渉くんの肩を叩き、にこりと笑いかけた。
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