第12話 忘れられない恋 七

  「あっ、お待たせしました和紀くん!」

「いえいえ!」

そして、本来の待ち合わせ時間になると理沙がやって来た。

 理沙は背が低くて細く、かわいらしい雰囲気の女の子で、和紀を遠目に見つけると小走りで近づいてくる。そしてその日理沙は白いステンカラーのコートに黒のスカートという出で立ちであった。

 『南沢さん、今日すっごくおしゃれだな…。

 僕も、もっと気合入れた格好した方が良かったかな…?』

 対する和紀は身長は170cmとそれほど高くはなかったが、細身でどちらかというと実際の身長より高く見られる方であった。

また和紀はこの日のためにカーキのカーゴパンツを新調したが、コートは、

 「ファッションは頑張りすぎてはダメ。」

という和紀が読んでいる雑誌の言葉を守り、いつも着ているものを着用していた。

 「それで…今日はお疲れさま会だよね?

 どこに行くの?」

「え…あ…あのね南沢さん…。」

 和紀は前日、この日に向けてイメージトレーニングをしてきたが、言葉がスムーズには出てこない。

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