09-10.初体験

明かりを落とした部屋の中で、俺はベッドの上に正座している。

その向かいには同じく正座した愛の姿。

その表情からは、緊張しているのが伝わってくる。


「緊張してる?」


と愛に聞かれて、短く答える。


「してない」

「本当は?」

「…………、めちゃくちゃしてる」


チキン野郎と笑いたければ笑え。

なにしろ初めてなのだ。緊張しない訳がない。

まあそれでも意地を張るのが男だろうと思わなくもなかったけど重ねて聞いてきた愛も悪いと思います。


「愛もしてるだろ?」

「うん……」


頷く愛のその面持ちと、同じ表情を俺もしているんだろう。

大学の入試発表の時でさえ、こんなに緊張はしなかった。

とはいえ、このままずっとお見合いをしているわけにもいかない。

震える指を握り込んで隠しながら、意を決して「いいか?」と聞く。


「うん」


と返事を聞いて、顔を寄せ、鼻先が触れる。

そのまま微かに顎をあげて、お互いの唇が触れた。

キスをするのはもう何度目か。

この柔らかい感触はそれだけで幸せを感じられて、油断すると癖になりそうな魅力がある。

最初の頃はこんなに幸せなことが、俺に許されていいんだろうかなんて思ってしまったくらいに、愛とのキスは幸福だった。

柔らかくて、温かくて、気持ちいい。


「このまましてると気持ちよくて眠くなりそうだ」

「今日はこのまま寝る?」

「……、最後までするよ」


一瞬迷ったのは、この心地良い関係から、前に進まなくてもいいんじゃないかなんて思ってしまったから。

それでも、ずっと一緒にいると決めたならここで躊躇しててもしょうがない。

もう一度顔を寄せてキスをして、今度はそのまま舌を入れる。

柔らかい唇に触れながら、隙間に射し込んでお互いの舌先が触れる。

愛も自分の舌を動かして、お互いに絡め合うとその刺激だけで快感が生まれる。

唇を合わせたときの幸福感とは違う露骨な快感に、少しだけ気恥ずかしくなりながらも抗わずに身を任せる。

そもそも、身体を合わせる快感は性行為を促すための人間の正しい反応で、恥ずかしがる必要はない。

なんて理屈で考えてみても、気持ちは丸め込まれてくれないけど。

とはいえ今さらやめる気もなく、その勢いのまま愛の胸に手のひらを重ねた。

その感触はとても柔らかくて、柔らかすぎる。


「ブラ……」

「着けてないよ? …………、着けてた方がよかった?」

「いや、この感触の好きかも」


ということはシャワーを浴びてから、愛は下着を着けていなかったのか……。

ちょっとその様子を想像するだけで、興奮してしまう自分は変態なのだろうか。

しかし正直、シャツ越しに触る胸の感触は、日常に挟まれた非日常のように思えて、とても興奮する。

背中や肩に何度か触れたことはあったが、自主的に触って揉むのが初めてのその胸は、とても柔らかくて愛の女性の部分を感じる。

そのまま全体を包むように揉んで、指を動かすと固い感触に触れた。


「んっ……」


短く声を漏らした愛に合わせて、乳首を親指で弄ると、だんだんと勃ってくるのがわかる。


「やっ……、そこばっかり……」


その反応がかわいくて、服の上から指先で何度も擦ると、愛が恥ずかしそうに息を漏らす。


「ゃっ…………、ぁっ…………」


部屋の中に愛の漏らす声が続き、シャツの上から見るだけでも位置がわかるようになった乳首を弄り続ける。

愛の声を抑えようとする反応と、ぎゅっと閉じたまぶたに、心の中の嗜虐心が刺激される。

ああ、俺にこんな性癖があったのか。

今さらそんなことに気づいて、愛にちょっとだけ申し訳なく思いながらも、その手を動かすのをやめる気にはならなかった。

だって愛の反応がこんなにかわいいくてエロいのが悪い。

そのまま円を書くように胸を撫でて、指先で乳首を挟むと「んんっ」とひときわ大きい声が漏れた。


「痛かったか?」


聞く俺に、愛が首を横に振って答える。

そのまま指を動かして、乳首を絞ると愛の体が大きく跳ねた。

はぁはぁ、と呼吸を荒くする愛の抱きよせて、頭を撫でると心地良さそうに体を預けてくる。


「おっきくなってる」


呟いた愛が視線を落とした先には、俺の股間が服の上からでもわかるくらい大きくなっていた。


「見てもいい?」


と聞かれて頷くと、愛がジッパー下ろしてチンコが露出する。

それをまじまじと見つめる愛と、観察されて恥ずかしい俺のあいだに微妙な間が生まれて、そのまま愛の指が触れると予想外にひんやりとしていてびくりと反応してしまう。


「だ、大丈夫?」

「大丈夫、ちょっと驚いただけ」


ひんやりとしたその指は、手を水で洗ったあとくらいの温度で、驚いたけど触られても不快じゃない。

むしろその冷たい感触がクリアに感じられて、愛の細くて柔らかい指の感触と共に強く意識を刺激する。

先端の方を触るたどたどしい指使いがもどかしくて、でもそれだけで自分で触るよりもずっと強い快感が走る。

そのまま愛が頭を下げて、俺のチンコを至近距離で見つめる。

その距離は愛の鼻先が触れそうになるくらいの距離で、吐息が先っぽにふーっとかかってくすぐったい。


「おっきい」


と呟いた愛が見る俺の陰茎は、自分でオナニーするときよりも大きく、硬くなっていて、興奮具合でこんなにサイズに差が出るんだなと自分でも驚く。

というかまじまじと見つめられると恥ずかしいんだけど。

そんな俺の思いも知らずに指で触りながら観察する愛が、舌を出してすーっと裏の筋に舌先を這わせる。


「!?」

「だ、大丈夫?」

「大丈夫、問題ない」


二回目の同じやり取りを繰り返して、愛が視線をあげてこちらを見る。


「続けても、いい?」

「愛が嫌じゃなければ」


了承を得て再び舌を出した愛が裏の筋を舐め、それだけですぐに射精してしまいそうな快感が走る。

竿の根本を両手で包んで、二度三度と繰り返し舌が這う快感に、腰の裏の当たりがゾクゾクする。

夢中になった犬のように舌を動かす愛に片手で頭を撫でると、視線を上げて嬉しそうにこちらを見る。

その間も続く刺激に射精してしまわないように耐えていると、今度は愛が大きく口を開いて竿の先端をそのまま咥える。

思わず腰を引いてしまいそうな快感が走って、チンコが熱い感触に包まれる。

愛が頭を上下させるのに合わせて、竿が唇でしごかれて、同時に先端を舌で刺激されていく。

俺の股間に顔を埋めて、何度も何度も顎を動かす愛に射精感が競り上がってくる。

一際強く搾られて、そのまま腰が震えた。


「ん……っ」


精液を口で受け止めた愛が顔をしかめる。


「不味い」

「無理して飲まなくていいぞ」

「そうする」


愛が口に含んだ精液をティッシュにくるんでゴミ箱へぽいっと捨てる。


「気持ちよかった?」

「死ぬかと思った」

「ならよかった」


本当にこの後がなければもう一回してほしいくらい気持ちよかった。


「それじゃあ、服脱ぐか」

「うん」


相変わらずお互いに向かい合って座って、服を抜いていく姿はなんだか恥ずかしい。

無言でそそくさとそれを済ませて、一糸纏わぬ姿が暗闇にうっすらと浮かぶ。


「感想は?」

「エロい」

「バカ」


愛にヘッドバットをされておでこがごつんとぶつかる。


「……、綺麗だよ」

「最初からそう言えばいいんだから」


機嫌をなおした愛の頬を撫でて唇を重ねる。

相変わらす柔らかい唇のあいだから啄むように舌を絡めて、ゆっくりと顔を離す。

するとなぜか愛が上目遣いでこちらを見る。


「嫌じゃない?」

「何が?」

「さっきまで、口でしてたから」

「ああ……」


自分のチンコと間接キスは確かに気になる。


「気にはなるけど、それより嬉しかったから」


あと気持ちよかったし。

だから自分のチンコと間接キスしたくないからって、愛とキスするのを避けたりはしない。


「そっか」


なぜか嬉しそうな愛ともう一回キスをして、そのままベッドに倒れ込む。

唇がベタベタになるくらい何度もキスを重ねて、とろんとした目の愛にもう一度キスをする。

枕の上に手を伸ばすと、その手を優しく愛に握られる。


「今日は、大丈夫な日だから」


その言葉の意味を理解して、掴んだゴムを置く。

幸い俺は働いていて自立しているので責任を取れる。

自分の行動に責任を取れるというのは大人になって数少ないメリットだな、なんて考えは過去を美化し過ぎだろうか。

これが学生の頃だったら、大丈夫って言われても生ではしなかっただろうな……。

なんて実際にそんな機会はなかったから意味のない仮定だけど。


「それじゃあ、入れるぞ」


その言葉に愛がこくりと頷いて、まぶたを閉じる。

十分に濡れた割れ目に、先端を合わせてゆっくりと挿入していくと、愛が眉を歪めて小さく声を漏らす。


「んんっ……」

「痛いか?」

「だい、じょうぶ……」


愛の言葉を信じて、 ゆっくりと膣を分けて進み、一番奥にたどり着く。

そこで一旦動きを止めて、閉じていたまぶたを開いた愛と視線が重なる。


「ちょっと休憩」


俺の言葉にこくりと頷くと愛を見ながら、やっと童貞を捨てたんだなあと感慨に耽り、愛の頬を撫でる。

改めて見下ろすその姿はとても美しい。

枕に広がる髪も、薄く桃色に染まった頬も、浮いている鎖骨も、ほどよい大きさの胸も、適度に締まった括れも、撫でたくなるようなおへそも、全部が愛おしい。

愛でるように頬から耳へと指でなぞると、愛が声を漏らす。


「くすぐったいよ……」


恥ずかしそうにする愛がかわいくて、そのまま耳を内側まで撫でると、愛が更に息を吐いた。


「んっ……、んんっ」


くすぐったそうな愛の姿が可愛くて、指をなぞる度に膣が軽く締め付けてくる。


「かわいい」

「ばか」


そのまま指を下ろして首筋から鎖骨を伝って、胸の膨らみまで指を這わせる。

仰向けになって外側へ流れた胸を両手で包み込むと、普段より小さく見えるな、なんて失礼な感想を持ってしまった。


「そろそろ、動いていいよ」

「大丈夫か?」

「うん」


大分楽になったように感じられる愛の表情を見て、ゆっくりと腰を引いてまた突き出す。

その動作を繰り返して、スムーズに前後に腰を動かすのが難しくて苦労してしまう。

世の中のカップルは当たり前のようにこんなことをしてるなんて、ちょっと尊敬する。

しかし愛の体が揺れる度に、ぷるんと跳ねる胸は眼福だった。

腰を動かすのにも慣れてきたところで、その胸を掴んで揉むと愛の息遣いが不意に乱れる。


「はっ……、あっ……」


呼吸を荒くする愛に、パンッパンッと腰をぶつける度に快感が大きくなっていく。

乳首を指で挟むと膣がキュッと締り、その拍子に愛が一際大きく息を漏らし体が跳ねた。


「んんっ!」


絶頂に体を痙攣させる愛に一瞬遅れて、俺も膣へと射精してゆっくりと腰を止める。

いつの間にか止まっていた呼吸を再開して落ち着かせながら、同じように呼吸の速度を落としていく愛の頬を撫でて体を倒す。

射精後の虚脱感に脱力して愛と唇を重ねると、今度は愛から舌を絡めてくる。

体を重ねて、もちろん気持ちよかったのだけど、それと同時に安心があった。

大切な人に認められて、受け入れられて、求められる。

そんな経験は初めてで、その幸せはふわふわしていて現実感がない。

いつかこの感覚にも慣れるんだろうか。

思いながら膣から竿を抜いて、愛の横にごろんと仰向けになる。


「腰がいてえ……」


慣れない動きのせいもあるんだろうけど、一回射精しただけで腰が疲労でギシギシといっている。

腰を労るように横になって息を吐くと、隣の愛が体を起こして小さくなったチンコを眺める。


「んっ……」

「!?」


愛が先端をペロリと舌先で舐めて、そのまま口に咥える暖かい感触に包まれる。


「どうした、急に」

「こうしたらまた、大きくなるかなと思って」


俺のものを咥えたまま愛がそんなことを言う。

流石に三連発は無理だろうと思った俺の考えに反して、チンコは数分もしないうちに垂直に起き上がる。

というか向こうを向いてる愛の柔らかい胸が素肌に密着しているし、精液のこぼれるお尻がこっちに見えてるしとてもエロい。

リアル女体恐るべし。

自分でオナニーするときは30分は休憩しないと二発目もイケないのに。

まあチンコが回復しても腰は回復してないんだけど。


「今度は私が上になってあげる」

「ちょ、まっ……」


俺の制止を無視して上に跨がり腰を下ろした愛に、竿が包まれて締め付けられる快感が再び走る。

攻守交代と言わんばかりに頬を上げて悪戯に笑い、腰を動かし続けたまま全身を覆い被せるように体を重ねる愛と、再び唇が触れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

午後十時、カレーを食べに行く。女子高生と出会う。 あまかみ唯 @amakamiyui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ