第154話

「……そなたがを見初めたは、私には解せなんだ。それ程に幼き頃であったが、はそれを直様感ずる様な童女であったから、私はに賭けたのだよ。裳着もぎが済めば、甘え方が変わる様な少女ものであった。当時私には女御もいた。純子の面影もあるが、あの優しい気立てが純子に似ており、生きる為の力を取り戻していた、私の支えとなったものだ。その女御ものも私同様にを可愛いがったと言うに、その女御が里に下がった折に、から私を誘ってまいった。だがその時の私に躊躇いなどあり様はずもない、純子の顔が浮かび、そしてそなたの顔が浮かんだ。天より大きな力を得て産まれ、我が母の全ての力を得て育ち弱らせ身罷らせた、そなたの顔が浮かび私はを私の物と致したのだ」


「法皇様……」


「そなたがに執心であっても否でも、を当てがえばそなたは夢中となる……ゆえにを入内させた。直ぐにそなたはの虜となった……そなたに私同様の苦しみを与える為、が望む限り関係を続けた……いつかはそなたから、を奪い取ってやるつもりでおったのだ」


「お父君様!」


「今でも……そなたが憎い……どんなに似通った女御を抱いても、日に日に似てくるを抱いても、決して純子ではないのだ。純子はそなたのその力の所為で身罷ったのだ!!!」


 法皇は嘲笑う様にすると、涙を浮かべる今上帝から視線を逸らさない。


「そなたは知らぬだろうが、その青龍の力は物凄い……天子であったがゆえ私には、腹の頃から驚異でしかなかった。その恐ろしさはいずれ、全てもの者達が感ずるであろう……青龍ならば納得がいく……そなたは覇王となる天子ものである……八百万の神々が存在致す、この中津國なかつくにには、古よりその様な天子ものは存在した事がない……そんな天子となるのだ……」

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