第149話

 それから直に中宮は体調不良を理由に、法皇が座す後院に里下がりをした。

 そして暫くした後、中宮は天の大神の夢を見た。

 神々しく光り輝くその尊き御姿すら、拝見する事は叶わなかったが、大神様は雛が言う通り、中宮の腹の子をお側仕えさせるが為に、直々に迎えに来てくだされたのだ。


「今上帝は特別であるがゆえ、この様にあいなったが、この御子は確かに我が子孫であるゆえ、ゆくゆくは神と致す事とする……我が尊ぶ大地の大神の意向により、我自らそなたに言い渡し貰い受けるゆえ、夢夢疑うなかれ」


 と言われて、金の玉を持って行かれた。

 余りにも尊く有り難く、中宮は久しぶりに穏やかな眠りの中で、涙を流した。

 そしてその翌日、中宮は雛の言う通り、それが決して夢偽りでない事を知った。

 もはや着帯の時期であったが、偽っていた為に、その真実が明かされる事は無かったが、大きくなり始めていた腹がペタリと引っ込み、その腹から子がいなくなった事は、近しい者達の誰の目にも明らかな事であった。

 腹の子は流産するわけでもなく、一夜の内にその存在すら無かったかの様に消えていたのである。

 中宮は軽くなった身を伏して、天の大神様と、再三諭しにお越しくだされた神仏達に拝礼した。

 そしてそのまま、髪を自ら切り落として落飾された。


「後院には仏にお仕えするお方が、お二人となられた……」


 暫く体の痛みが続いた雛に、今上帝は言われた。


「しかたあるまい?そなたの恐ろしさを少しは知ったのだ、とても側に仕える事はできまい?」


「まさか私の内からあの様な……」


「ふん。そなたが抱いているものである、騒ぎ立てたとて致し方あるまい?第一皇子と解れば青龍は食いに行く……それを知っていて、そなたに注進したは伊織よ……余程伊織は中宮に認めさせたかったか、青龍に食わせたかったか……」

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