青龍

第134話

 伊織は実に、面白い事になったと思っている。

 こんな面白い事を、見るからに頼りなく自分同様に若い、伊織が余り得意としない分野の、それも非力そうな陰陽師からもたらされるなんて……。

 意外過ぎて、面白くて堪らない。

 この中津國なかつくには、神々の国と言ってもいい国だ。

 今まで伊織は信じてはいなかったが、大神という存在がある国で、八百万もの神々も存在する。

 八百万も存在すれば、普通に生活しているだけで、神々と遭遇するという事だ。だから平安治世の現在、しきたりや占いで宮中は回り、神仏達が神の子孫の天子を守り、それで成り立つ有り難い国だ。

 その反面、魑魅魍魎や物の怪や妖しに、鬼や怨霊亡霊なども存在するが、大神とその瑞獣のお妃様によって、それらのは鳴りを潜めているから、本当に平安治世を維持する事が可能だった。

 ゆえに庶民の生活も安定し、豊かな国として繁栄を遂げている。

 多少の文句はあるだろうが、隣接する他国と比べればとにかく平和な国だ。乱世も無ければ、飢餓も疫病すら大した事は無いのだから。

 だから力を誇示する大国は、この国を幾度となく手に入れようとして来るが、平安治世に煩いお妃様の力と、大神の力がそれを許さないから幸せな国だ。

 何にしても、大国に攻め入られないのは神仏の加護だ。

 さすがに大神と八百万の神と、幾多の仏がいるだけはある。これで護られなければ、神仏の存在自体の必要性を疑うところだ。

 大国にも龍を抱きし天下人がいるというが、その者は大概覇王となると聞く。陰陽師の話しを聞く限り、かなり貪欲に力を貪り食い続けているという事か……。大国はその力により国を広げているが、力を好む龍が天下を取るから、とても平安とは程遠い乱世の国だ。取っ替え引っ替えの様に天下人が変わり、大勢の人間が命を落としている。

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