第49話

 最近の慣わしでは、貴族の姫君様が后妃になられるのが通常だ。

 女官の最高位の内侍司ないしのつかさ尚侍ないしのかみが后となるのが一般で、事実上の内侍司のトップは二番目の典侍ないしのすけという事になっているから、天子様にお仕えするのは貴いお方と、暗黙の了解ができている。

 それは摂関家の名残があるからで、今現在ですらそれらの一族の勢力は衰えていないから、天子様を支える后は、勢力のある一族の姫でなくてはならない、という道理からだ。つまり大きな後見を得る、天子様であるべきだからだ。そうでなくては治世は保てない。

 勢力一族は権力を得る為にを強いり。天子は穏便に滞りなく政を行う為に、強い勢力を持つものを得る。

 それが今の風潮だから、天子様の元には貴族の姫が遣わされている。

 中宮様とてそれは貴いお方だが、今は亡き関白様の姫様で、今の摂政とは系統が違うお方だが、早くに今上帝に譲位した先帝は、上皇となられて後院に退かれ法皇となられたが、後見を失ってしまわれた中宮様を、後院に引き取られて養育なされた。

 それはお側に置かれた女御が、御希望になられたという事であったが、法皇は今上帝のお母君様であった中宮を、こよなく愛されたが、今上帝を産んだ産後の肥立ちが悪く薨られてしまった。その悲しみが余りに強く、まだ小さかった今上帝に譲位して、一年後には愛する妻を思い法皇となられた。

 そして年上である、法皇の元で高度な教育を受けた故関白の娘が入内し、中宮として冊立されて中宮となった。

 そうなってからまだ三年も経ってはいないが、未だ今上帝には御子様が誕生されておらず、その為に現関白家からも入内され、大臣家からも入内の話しが出ている様だが、数ヶ月前あたりから、今上帝の奇行というべきなのだろうか、中宮付きの女房女官にお手を付ける事が始まられた。


 若い朱明など気づきもしない事だったが、確かに言われてみればそうだ。

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