第48話

「今上帝様は、本当まことに瑞獣様を?」


 朱明は確認する様に、噛み締める様に言った。


「おうよ。雛は如何しておるだろうか?と、毎日呟いておるそうな……」


「それは……」


 朱明は神妙に思案顔を作った。


「……果たして、望まれておるものでございましょうか?」


「ははは……ならば側近に確かめるがよい。……何せが女狐以外に、興を唆られる事自体が異なる事だそうだ」


「女狐?」


の中宮だ……なんだ?噂を知らぬのか?」


「噂?でございますか?」


 朱明が無知な顔を向けて聞くから、金鱗はほくそ笑んで朱明を見つめた。


が中宮に入れ揚げておる事は、此処の池におっても知っておるぞ。だが、中宮が禁庭の池の女共に、すこぶる評判が悪いは初めて知ったがな」


「そんなにご評判が悪しいので?」


「まっ、妻は妖狐程の美貌も無い、性悪な女と申しておったが……あの美貌は妖狐に引けは取らぬものゆえ、やっかみが大半であろうがなぁ……」


「さようで?……今上帝様より中宮様の方が目上であられますが、頗るご夫婦仲は良いと聞いております」


「頗る夫婦仲が良くて、女御を大勢かしずかせまい?」


「……それは……天子様なら致し方無いかと?」


「確かに……だが昨今の宮中では、女房女官には手をつけぬ風潮よ。更衣女御すら聞かなくなっているそうな……ところが今上帝は……」


「ついこの間のお方は、中宮様付きの女官であられたとか……」


「そうなのか?」


「その前も……中宮様の……」


「それでよく、夫婦仲が良いと言うておるものよ」


「あーいや……そういう事は、本当まことに昨今の事で……」


 朱明は、言われなければ気がつかなかったが、ここ数ヶ月で二人?三人?確かに中宮様のお付きのものをお相手とされている。

 それもそんなに、身分の高いもの達ではない。

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