龍を抱きし天子・瑞獣碧雅恋愛編
婭麟
一の巻
陰陽師安倍朱明
第1話
此処
かつて古の天子様に、その平安なる治世をお慶びの大神様から、それは美しい
そしてかつてはその瑞獣なるお妃様と、そのお妃様がご誕生されし御子様がおいでであったゆえ、鬼も
今宵も今宵とて、陰陽寮の陰陽師安倍
「色即是空、色即是空……」
「朱明様!」
「えっ?違った?」
朱明は鬼に頭を掴まれて、持ち上げられた。
「朱明また主か?その印が無くば、其方は生きてはおられぬぞ」
呆れた様に鬼は言うと、烏帽子を引き千切って朱明を放り投げた。
ズザーという音と共に、朱明は地べたに投げ打ち付けられた。
「あ!大事な烏帽子が……」
被っていなくては〝恥〟とされる烏帽子を握り潰されて、朱明は烏帽子に未練を現す。
「長らく其方達は、我らと対峙致す事もなかったからの……にしても、情け無い有様よ……」
鬼はクシャクシャにした烏帽子を、放り投げて笑った。
「其方も他の者達同様に喰ってやりたいが、残念ながらその印がある限り我らには手が出せぬ。先祖の恩恵を有り難く思えよ」
鬼は高笑いをすると、羅城門に姿を消した。
「朱明様……」
妖狐の孤銀が側に寄って名を呼ぶ。
「すまないね孤銀……私が
「お命がありましただけ、幸いにございます」
孤銀は地べたに座る主人に、身を屈めて言った。
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