第2話 村の外れにて

 ここは人類圏最東端の村の1つアトの村。

開拓初期に初代村長の名前を取ってつけられたらしい。記録は残っていない為、真相は定かでわない。


「おいおい、またやってるぜ」


 その声には聞き覚えがあった。この村にいる子供の中でリーダー格の少年、名はティック。彼はその太く力強い体格と乱暴な性格で、周囲の者を威圧し従えていた。


「そんな棒きれ、いくら振り回したって意味ねーのによくやるぜ」


 笑い声が響いた。それに伴い、取り巻きの少年2人も合わせたようだ。にわかに騒がしくなる。


 俺はその言葉を聞き流し、鍛練を再開する。


「おい、意味ねーって言ったのが聞こえなかったのか?」


 なおも木刀を振り続ける俺を不快に思ったのかティックが言葉を続けた。


「おれ様のことを無視しやがって雑魚が、そんなに強くなりてーなら稽古つけてやるよ!」


 ティックが拳を握り、正面に立つ。そこで初めて俺は視線を向け迎え撃つ体勢を取った。


「なんだ? やるつもりか。格の違いってやつを見せてやるよ!」


 彼の動きは捉えていた。こちらには木刀もある。リーチの差は歴然。迫り来る拳を叩き落とそうとする。しかし、彼が僅かに光り出した次の瞬間、動きが驚異的に加速し拳は身体に突き刺さり、俺は宙を舞った。


「へへ、雑魚が。大人しくおれ様に頭下げて媚びてりゃいいのによ」


 動けない俺にひとしきり拳を振るったあと、取り巻きと共に村の中心に向けて笑いながら歩いていく。


「……骨は折れていないな」


 幸いなことに、行動を制限されるほどの怪我を負うことはなかった。木刀を手に取り、鍛練を再開する。

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