第8話 部活動紹介
ポカポカ陽気の午後。僕ら新入生は体育館に集められ、床に体育座りをしていた。みんな、これから始まる部活動紹介におしゃべりが止まらない。
僕の隣には、僕の身体に入ったマイ。それから、谷さんが横に座っていた。黙っているのも不自然なので、僕は話しかける。
「谷、じゃなかった。遥歌はどこに入るの?」
谷さんのことは遥歌と呼べとマイから言われていた。遥歌は爽やかに笑う。
「私はもちろんテニス部! 一年からレギュラー狙っていくよ」
「テニス部ってやっぱり厳しいのかな」
「マイも知っているでしょ。栗亜学園のテニス部は
「そ、そうだよね」
うーん、テニスの強豪校か。それじゃ、なおさらマイがテニス部に入らないとガッカリするんじゃ。そう僕が考えているうちに舞台に一人のマイクを持った生徒が現れた。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。これより2、3年生による部活動紹介を行います。まずは吹奏楽部の演奏です」
そう言うとマイクを持つ生徒の後ろの幕が開く。そこには楽器を持った生徒たちがズラリと並んでいた。管楽器の高らかな音を皮切りに演奏が始まる。
マイが吹奏楽をやりたいと言わなくてよかった。僕に楽器なんて吹けないし、楽譜だって読めない。演奏の後は部活動の説明がある。栗亜学園は吹奏楽にも力を入れているらしく、コンクールで金賞を取ったりしているそうだ。
その後、二、三分の制限時間で、次々と部活が登場する。家庭科部にバスケ部、数学研究会にホッケー部。さすがに全生徒が、部活動必須なだけあって数が多い。
「次は応援部です」
例の応援部の順番が回ってきた。遥歌が横で耳打ちしてくる。
「マイたちが入りたい所だよね」
「うん」
僕は舞台の上に何一つ見逃さないと、視線を集中させた。きっとチアや学ランの衣装を着た生徒たちが出て来るだろうと思いながら。
あ、あれ??
出てきた人物は想像とは全く違っていた。
「応援部部長、早坂です」
マイクを持ったその人物は低いトーンで言う。彼女は黒い二つのおさげに、黒縁眼鏡とかなり野暮ったい姿をしていた。しかも普通に制服だ。他の部活はユニフォームがあればそれを着て出てきていたのに。
「私たち、応援部はがんばる部活を応援する部活です」
うん。そうだよね。とうか、私たちとは言うが、一人しか出てきていない。
「昨年はバレー部が全国に行った際に、応援団を作って現地まで応援に行きました。興味のある人は木曜日の放課後、第三資料室に来てください。以上です」
それで終わりだった。全部で一分もかかっていないかもしれない。
「えーと、なんだか変わった部活だね。でも、応援のために旅行が出来るんだ。いいかも」
遥歌がかなり言いにくそうにフォローする。今の説明のどこにうらやましがる要素が?
「なぁ、本当に入るつもりかよ」
僕は隣のマイにこっそり聞いてみる。
「もちろん」
やっぱりか。マイは一度言いだすと簡単には撤回したりしない。頑固で
「では、次はテニス部です」
テニス部の紹介が始まる。学校指定の青いジャージを着た男女がラケットを持って舞台に出てきた。
「私たちテニス部は、新しく入部する新入生を歓迎します。昨年は全国大会出場を逃しましたが、今年は必ず勝ちます!」
おお、初っ端から勝ちます宣言か。やっぱ、強豪は違うね。
「こちらは二年女子のエース、
一人の女子生徒が前に出て来る。お団子頭で、たれ目の中々可愛い人だ。その二宮先輩にマイクが渡された。
「こんにちはー。新入生の皆さん。テニス部は誰でもいつでも歓迎です。見学にいらしてくださいねー」
おっとりと言う二宮先輩に、一年生男子生徒たちははーいと返事していただろう。僕は言っていた。
「それから、鶴ノ原マイさーん」
わぁ、いいな、マイ。こんな可愛らしい人に名前を呼ばれるなんて。
「マ、マイ。のんびり聞いているけど、呼ばれているよ」
「はっ」
いまは僕がマイだったことを遥歌に言われて思い出す。体育館の視線は当然、僕に集中していた。
「今日の放課後、テニスコートに来てください。二年生エースと一年生エース。どちらが、テニス部の真のエースか決めましょう」
「へ……?」
部活動紹介中に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます